厚生労働省の諮問機関が、熊本県を含む地域の最低賃金の引き上げ幅の目安を「64円」と示しました。実現すれば時給は1000円を超えますが、果たしてどうなるのでしょうか。

この引き上げ幅は過去最大です。地域間格差の解消などを目的として、初めて都市部を上回りました。

都道府県別の最低賃金 引き上げ額の目安

【64円】青森、岩手、秋田、山形、鳥取、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、
宮崎、鹿児島、沖縄

【63円】埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、大阪、北海道、宮城、福島、茨城、栃木、群馬、新潟、富山、石川、福井、山梨、 長野、岐阜、静岡、三重、滋賀、京都、兵庫、奈良、和歌山、島根、岡山、広島、山口、徳島、香川、愛媛、福岡

街で見かける「最低賃金」は

熊本県の現在の最低賃金は「952円」です。目安通り引き上げられれば、初めて1000円台に乗り「1016円」となります。

記者「時給1200円、こちらは時給1150円。最低賃金を大きく上回る時給も珍しくない中、アルバイト従業員の皆さんは、自身の時給についてどう感じているのでしょうか」

大学2年生 時給1000円「安いと思います。頑張ってバイトしないとな」

大学2年生 時給1000円「欲を言えばもうちょっとあったらいいと思うけど、熊本だからしょうがない。レストランのメニューの価格を見ると『1日のバイト何時間分だな』と思っちゃう。上がってほしいですね」

一方、時給には満足していて、経営側を心配する声もありました。

大学3年生 時給1100円「1100円で十分と思う。今後、時給が上がるとシンプルに嬉しいですけど、上げることで経営のリスクはある」

実際、熊本市中心部の上通アーケードにある洋服店の経営者は、最低賃金の上昇に合わせて従業員の給料アップを検討していますが「経営的には辛いところがある」と話し簡単ではないようです。

洋装のタバラ 田原誠也社長「零細企業にとっては、上げろと言われても売上が上がらないことには賃金を上げられないので」

商品の仕入れ値も上昇していて、人件費も含めた費用の負担が経営を圧迫します。

同じアーケード内に店を構え、黒毛和牛やあか牛のすき焼きが人気の店では、アルバイトの時給は「1400円」です。

中心部の飲食店は時給を高めに設定しないと人材が集まりにくいと言いますが、そでれも状況を前向きに捉えています。

すき焼 加茂川 山下みきさん「人件費上昇はこれぐらいに収まってほしいけど、前向きに考えて、その分お客様に来ていただいて、1人1人が売上を上げてくれればOKだと思います」

今後の議論は「労使間で激しい綱引き」か

熊本県内の最低賃金について話し合う熊本地方最低賃金審議会が8月7日に開かれ、労使の代表者などが意見を交わしました。

審議会では、64円の目安額が消費者物価の上昇などを考慮したことが説明されました。

次は8月12日に、具体的な金額を審議する専門部会が開かれますが、労働者側と経営者側の激しい綱引きが予想されます。

去年も議論が紛糾し、2年連続で10月1日の改定に間に合わず、10月5日の改定になりました。

64円の目安額をめぐって「物価が上がっているので生活のために賃金を上げてほしい」という労働者側と、「価格への転嫁が進まない」という経営者側、お互いの本音の隔たりは大きいようです。