第2次トランプ政権始動 1期目との違いは?

――かなり「スタートダッシュ」で来ると見てよいか?

NTT会長 澤田純氏:
かなり前のめりな印象を受ける。

――トランプ政権のスタート。1期目と2期目、何が違うか。

NTT会長 澤田純氏:
自信を持っている。例えば全国投票率もトランプ政権が勝った。「トリプルレッド」もある。激戦7州でも勝っている。かなり自信を持って進めている印象は強い。

――懸念・警戒と期待はどちらが強いか。

NTT会長 澤田純氏:
両方あるが、私の中では「期待」がある。いろんなことが変わっていくので、それはチャンスでもあるし、もう一度「MAGA」でアメリカを強くしていくという意味で、かなり昔のアメリカにも戻る部分もある印象だ。

第2次トランプ政権始動 日本企業の期待と不安

日本企業の中では、関税に対する心配がすごく強い。ジェトロがアンケートをとったところ、「トランプ政権の政策が自社に与える影響」として「プラスの影響がある」と答えたのは10.8%。「プラスとマイナスの影響が同じ程度」としたのが14.2%。「マイナスの影響がある」と答えたのは25%に及んでいる。

――プラスと勘案している企業もたくさんいる。世論からいうと意外な感じがする。

NTT会長 澤田純氏:
半分(48.1%)は「現時点ではわからない」というのもよくわかる。

では「どの政策が」という内訳見ていく。「関税政策」と「移民・外国人・就労ビザ政策」についてはマイナスの影響があると答えた企業が多く、「エネルギー政策」「インフラ整備」「法人税など税制改革」についてはプラスの影響があるとなっている。

――関税政策に懸念があるのはわかるが、他はどうか。

NTT会長 澤田純氏:
「移民・外国人政策」。アメリカで事業をやる場合に、人に来てもらうのがスムーズになるかどうかが関係してくる。

――一方で、「エネルギー政策」「インフラ整備」「税制改革」は期待が高い。

NTT会長 澤田純氏:
かなり政策的にも強く出てくるので、優遇措置が来るんじゃないかと。今までバイデン政権の時に、入っていたところに入らないという懸念もある。

――エネルギーや金融は、セクターとしては期待が高いか?

NTT会長 澤田純氏:
期待が高い。EVとか環境はどうかという感じになるかもしれない。

第2次トランプ政権始動 注目の関税政策の懸念は…

関税について、トランプ大統領は、不法移民対策としてメキシコとカナダに対しては2月1日から25%の関税をかける。また中国に対しては合成麻薬フェンタニルの原料を輸出しているとして、10%の追加関税を検討している。初日から日本相手にも発動してくるのではないかという話もあったが、実際にはなかった。

――貿易の話ではなく、不法移民対策ということか。

NTT会長 澤田純氏:
おそらくそういうブラフ(自分が強いカードを持っていると見せて、相手を勝負から降ろさせる行為)が入ってメキシコ、カナダ側がアメリカに有利な(不法移民対策)案、あるいは(中国が)麻薬対策案を出してくれるかどうか。コラテラルダメージ、いわゆる付随的に日本の企業がメキシコ、カナダでたくさん自動車を作っているので、関税が上がると、かなり厳しい。

日本の自動車メーカーの状況。トヨタ・ホンダ・日産・マツダの4社がメキシコに製造工場を持っている。生産台数合計131万台。そのうちアメリカに輸出されたのは87万台。カナダではトヨタとホンダが合わせて90万台を生産して、これも一定数はアメリカに入っている。そこに15%の関税がかかれば大変で、当然、自動車部品の会社もたくさんある。メキシコからアメリカの工場に出しているところもある。

――隣国からの物に、全部25%関税かけたら、実はアメリカが日本以上に大変ではないか。

NTT会長 澤田純氏:
そのままだと、インフレにもなり、大変だと思う。おそらくいろんなディールがあり、2月1日とまずおくというのもあるのかもしれない。段階的にいろいろなことが起こるのかもしれない。

――中国のフェンタニル対策で10%。これはまだ序の口と見た方がよいか。

NTT会長 澤田純氏:
これはもう、戦略的に「低めから」ということではないか。前は60%とか言っていた。(何かあれば)また乗っけやすいようにしている。かなり多層的な取り組みが出てくる気配。

トランプ政権内に3グループ 貿易赤字是正で何を要求?

――トランプ政権には「3つのグループ」がある。この権力構造は?

NTT会長 澤田純氏:
大統領の演説でもあったが、「MAGA」を定本のように、みんなビジョン的に使っている。そこにおいて横通しはできるが、どこが(権力を)取るのかについては、権力抗争が出ると思う。

――貿易赤字不均衡。トランプ氏は、日本にはまだ触れていない。このまま逃げ切れるか。

NTT会長 澤田純氏:
いや、駄目だと思う。貿易赤字不均衡というのが、強いアメリカのためにはよろしくない事象なので、1週目ではないが、2週目に日本に対して「これだけの赤字がある」「なんとかしてくれ」と。「エネルギー、石油や天然ガスを買え」あるいは「兵器を買え」とか、そういう「アメリカのものを買ってくれ」という議論が強くなると思う。

――一期目のときは、TPPから脱退したアメリカが不利益を得ているということで、農産物の市場開放を求めてきた。今回はどこに行くか?

NTT会長 澤田純氏:
関税的な要素では、どこかの産業に「特に」というのはないかもしれない。

――昔、NTTは「もっとアメリカ製品化を買え」と言われていたが。

NTT会長 澤田純氏:
今はアメリカ製品ばかり買っていて、むしろデジタル赤字が5兆円ある。そこはちゃんとアピールをした方がよいと思う。

――防衛費については?

NTT会長 澤田純氏:
防衛兵器は、他国への状況を見てると、まず在日米軍のコスト、さらには防衛費のGDP比を上げてくれと来る可能性が高いような気がする。