2004年6月、長崎県佐世保市で小学6年生の女子児童が同級生にカッターナイフで頸部を切りつけられ殺害された。新聞記者をしていた父親は混乱の中、警察、学校、さらに取材にも応じた。関係する全員が現実の前に立ちすくみ動揺していた。その渦の中で取り残されていた子どもがいた。被害者となった少女の兄だ。当時中学3年生。
兄は加害者の女子児童と妹との間に起きていた、事件にいたる重要な経緯を知っていた。しかし大人たちは兄を事件の関係者としては扱わなかった。直接的な被害者としても扱わなかった。その気遣いとある種の無関心は、兄の心を静かに切り裂いていった。
2025年11月、兄は長崎市で講演に登壇。これまで見過ごされてきた被害者きょうだいの孤独について語った。















