2001年6月8日午前10時過ぎ。大阪教育大学教育学部附属池田小学校に、出刃包丁を持った男が通用門から侵入した。2時間目の授業が終わりに近づいた頃だった。校舎1階にある2年生と1年生の教室などで、男は児童や教員23人を殺傷した。死亡者8人(1年男子児童1人、2年女子児童7人)、負傷者15人(児童13人、教員2人)という痛ましい事件だった。

 事件発生を酒井肇さんの妻が知ったのは、携帯電話にかかってきた友人からの電話だった。「車のラジオを聞いていたら、麻希ちゃんの学校で大変なことが起きてるらしい。麻希ちゃんは大丈夫なの?」

 友人宅でテレビをつけると、すでに校舎から校庭に子供たちが走っている様子が映されていた。妻はいても立ってもいられず、すぐに酒井さんに連絡したという。「もちろんこの時には、まさか自分の子供が被害にあっているなんて思いもしませんでした」と酒井さんは語る。