◆燈火を調べさせたら、穴を掘っていた

(炭床)事件当時は兵曹長で甲板士官の外に任務はなかった。甲板士官は榎本中尉と自分と二人であった。直属士官は井上副長であった。処刑の夜、処刑場から500メートル離れた所で自分は火葬をしていた。処刑場の方から音は聞こえぬが燈火が見えた。処刑開始後、人を派遣して確かめさせはしなかったが、火葬中に午後8時頃、作業員の一人をやって燈火を調べさせたら、処刑の為、穴を掘っていると言って来た。その後一人で処刑場に行った。それは午後9時過ぎに防空壕に居たら、伝令から、処刑があるから現場に皆行くようにと言われたから、誰の命令か聞かなかった。副長の命令とは聞かなかった。
◆誰の命令によるものか

(炭床)○○に皆を連れて行けと言い、自分は火葬場を見廻って一人で行った。現場に着くと一人の飛行士が柱に縛られているのを見た。他の二人が既に処刑されていた事は後で分かった。自分は、好奇心はあったが、命令がなければ現場には行かなかっただろう。仕事の事では井上副長と榎本中尉の命令で動き、その他の事は当直将校の命で動いた。誰かの命か確かめなかった。その必要を認めなかった。刑場に行ってから、誰にも届けない。伝令の伝えて来るのは命令だから直に応じた。
◆戦死者の火葬 誰かは知らぬ

(炭床)自分が火葬していたのは、その日戦死していた二名で、部隊も本人の氏名も知らぬ。どうして死んだかも知らぬ。私が死体の受け取った時は箱の中に入っていたので負傷していたか否か分からぬ。夜、火葬すると戦死者と同じ隊の者が翌朝骨を拾いに来る。火葬前に普通儀式はある。戦友のことだから可愛そうだと思ったが、相手が誰か分からぬので、相手に対し特別の感情は特になかった。戦時中の事だからやむを得ないと思った。命のやり取りをしている戦場の事だから相手方に対し、別にどうと思わなかった。