
正常な判断を鈍らせ、正しい安全判断ができずに重大な事故を引き起こしてしまう飲酒運転。
罰則が厳しくした2002年以降、その件数は減りつつありますが、令和3年中の飲酒運転による交通事故件数は2198件、このうち沖縄県だけで1189件発生しています。
「自分は大丈夫だと思った」これは飲酒運転をして事故を起こした運転手がよく口にする言葉だといいます。その危険性は広く知れ渡っているにも関わらず、なぜ飲酒運転がなくならないのか、それは「知識と理解」が足りていないことが原因と言われています。
そこで実際に飲酒運転を行い、運転にどの程度の影響が出るのか、確かめてみることにしました。
■通常時の運転の能力の確認や反応速度は-
県警と那覇署の協力のもと、自動車学校で行われた飲酒運転実体験教室。私たち記者のほか、一般企業の職員やアメリカ軍の関係者らが参加しました。
まずは酒を飲む前に、学校内のコースの試走を行います。一時停止やS字クランク、方向転換など、普段から車の運転をしていた記者は問題なく走行することができました。また、反射神経など反応速度を図るテストでは、実年齢の37歳より若い、19歳と判定が出るなど、運転能力や判断能力に問題がないことが分かりました。


次に1時間程度の飲酒を開始、私はビール2本、チューハイ1本、ワイン5杯を飲みました。飲酒運転を検挙する際に使われる計測器で呼気に含まれるアルコール濃度を測ると、取り締まり対象となる0.15ミリグラムの3倍以上の0.51ミリグラムが検出されました。
この状態で路上で運転した場合、道路交通法第65条第1項のもと、3年以下の懲役または50万円以下の罰金、また免許取り消しとなります。酒酔い運転となった場合にはより罰則が重い、5年以下の懲役または100万円以下の罰金となります。
酒は強い方だと言われる私は、高い数値が確認されたものの、会話は普通にできていて、酔いは回っていないと感じていました。「実は問題なく運転できるのでは?」と思いながら自動車学校の教習指導員の監視のもと、飲酒運転をスタートしました。
■運転直後から感じる異変、「何かおかしい…」
しかし走行開始直後から飲酒前との体の変化が現れました。道幅は通常より狭く見え、一時停止の標識を見逃すなど注意力が散漫に。アクセルやブレーキ、ハンドルの操作が荒々しくなっていることを自覚しながらも、うまく制御できない状態になっていました。
教習指導員
「危ないですよ、ゆっくりでいいので確実にハンドル操作をしてください」

S字クランクなど難易度が高いコースでは前輪を乗り上げ、切り返しでは何度も車体を出入りさせるなど、頭では分かっていても適切な操作ができなくなってしまい、「自分は大丈夫だと思っていたのに…」事故を起こしてしまった多くの運転手が口にする状況を味わうことになりました。
教習指導員
「全体的にスピードが速くなっていますし、最初の運転とは全然違っています。本人が大丈夫と思っている以上に、酒は運転に大きく影響します」
また運転終了後に反応速度を図るテストを再度行うと、ミスが増加してしまい、19歳だった判定結果が43歳になるなど目に見えて判断能力が低下していることが数値にも表われました。

沖縄県警交通企画課 花城啓寿次席
「そんなに酔ってないなと感じた人でも計測してみると免許取り消しの基準に達している人がほとんどだったので、そういう感覚というのは自分ではわからないとは思います」
「飲酒運転は犯罪ですので、絶対に飲酒運転をしないさせない、という気持ちを持っていただいて、もちろん周りの方にも声掛けをしていただいて、県民全体で飲酒運転根絶という機運を高めていけたらなと思っています」
重大な交通事故につながる悪質で危険な飲酒運転。旧盆など飲酒をする機会が増える今の季節ですが、心の隙が誤った判断を招き、一度の過ちで人生を台無しにしないためにも、1人ひとりの自覚と努力が改めて求められています。