お米を取りに行った神田勝郎さんが偶然見つけた父の手記『我が思い出の記』の最初の部分には、戦地へ向かうために自宅を出発する日のことが記されていました。

『戦況は日々悪い方向にあった…』
『家を出る時、裏の三勇次さん(宅との)境に来ると、振り返って我が家を見て…』
『再びこの家に帰れるだろうか、よくよく見たことを覚えておる』

【神田勝郎さん】
「我が家とこのお隣のお家のこの境あたり、この辺だと思うんですよ。病気だった母のことを思ったり、我が家の行く末を考え、振り返ったと思います」

父・正平さんは、終戦の知らせを出征先の朝鮮で受けています。
その当時、大きな役割を正平さんは任されていました。
停戦命令が入った書簡を、馬に乗って最前線の部隊へ届けるという役目です。

【神田勝郎さん】
「大事な終戦、敗戦の報を前線第一線にいる上官に伝えなさいという、いわゆる『乗馬伝令』ですね。馬に乗ってメッセージを伝える…」

過酷な状況下で正平さんは、無事その大役を果たしました。

『敵の偵察機か何か単機が飛来し、我々を発見し…』
『機上掃射を受けて、慌てて山の谷合の中に逃げ込んだ事もあった』

『成美中尉は早速封を切る。しばらくすると静かな声で「戦争は終わったよ」と、一言言っただけ』
『その表情は何とも形容の出来ない淋しい様な悲しい様な放心状態の顔であった』