”ヒバクシャ”はイギリスにも…生涯続く苦しみ

たった一発で、多くの犠牲者を生む核兵器。戦後、世界はその開発に突き進む。

1949年には、ソ連が原子爆弾の実験に成功。その3年後、アメリカが水爆の開発に成功した。

米ソの核開発が過熱するなか、3番目に核保有国となったのがイギリスだ。イギリスは、原爆に続き、水爆の実験にも突き進んだ。

その過程で、生涯続く苦しみを負った人たちがいる。

今回JNNの取材に応じたのは、イギリス・ロンドン近郊に住む、退役軍人のブライアン・アンサンクさん(86)。 

アンサンクさんは、1950年代にイギリスが南太平洋で行った核実験「グラップル作戦」に参加。
イギリス軍は1967年末までに、核実験に兵士2万2000人以上を動員していた。

当時19歳だったアンサンクさんは、詳しい説明もないまま、海辺に座らされたという。

「他に類を見ないほど明るく白い閃光でした。骨や腱、血管が、目に押し付けた握りこぶしを通して、レントゲン写真のように全て透けて見えました」とアンサンクさんは語る。

2度の水爆実験を経験したアンサンクさん。帰国後、身体に異変が起きた。

最初は、歯ぐきからの大量出血。20代でほぼ全ての歯が抜け落ちたのだ。さらに、体中には無数の傷跡が…

受けた皮膚がんの手術は、90回以上になると話す。

何のために核実験に参加させられたのか…アンサンクさんは、人体実験だったのではないかと考えている。

「私たちは放射線を浴びた空気を吸い、水を飲み、魚を食べました。科学者はネズミなどを使って実験をします。私たちは同じように実験台にされたのです。これが命の扱いとして平等でしょうか。そうは思いません。私たちは皆、苦しんでいます」