◆父はソ連抑留所内で死亡

司令が夜間、遠方から彼を呼び寄せさえしなかったならば、彼はこの事件には関係せずに済んだのであります
執行後、彼が墓穴に野の花を捧げ、敬礼して立ち去ったという話は、彼の人格を十分説明するものと思います
彼の父は終戦時、満州からソ連領内に、ソ連軍により連行抑留せられ、1945年10月9日、抑留所内で栄養失調で死亡しました
彼の母は夫を失い、今また長男を失わんとして、他の3人の子供を擁し、悲愁と生活難のため、気も狂わんばかりであります
◆自己の不運をあきらめないように

幕田大尉を含め、3人の「有用な青年」の記述をしたあと、マッカーサー宛の嘆願書は次のように結ばれる。
<嘆願書>
もし閣下の御賢慮と御慈悲により、被告人等に対する原判決の刑が軽減せらるることが出来れば、被告人等、及びその家族は日照りに慈雨を得たように蘇生し、歓喜と希望をもって日本の再建のみならず、世界人類の福祉のために献身するに相違無いことを信ずるものであります
何卒、彼等をして単に自己の不運をあきらめることに終らしめないよう、衷心より幾重にも懇願する次第であります