関税を立法化する動きはない
結局、当面の関税政策の行方を決めるのはトランプ大統領自身だ。その判断を占ううえで2026年11月の中間選挙は重要な政治イベントとなる。
共和党が上下院の過半数を失えば、議会との対立が先鋭化し、トランプ大統領は自身の政策をほとんど推進できなくなる。
関税を背景に米国経済の減速や消費者の強い不満が鮮明となる場合、トランプ大統領は政策修正に踏み切り、選挙前までに景気浮揚を図る可能性が高い。
現状で譲る気配のない一律関税10%や自動車関税25%を巡っても、選挙に勝つために税率を引き下げるかもしれない。
2029年以降のポスト・トランプの関税策を巡っては、当然次期大統領のスタンスに大きく依存する。既存の関税策は大統領権限のみで実行されているに過ぎないからだ。
5月22日、下院は個人所得減税の延長やチップ収入に対する一部免税を盛り込んだ税制法案を可決した(執筆時点では上院が同案を審議中)。
同法案には関税収入に関連する内容はほぼ含まれず、大統領が「関税を自由に操れる権限」は維持されている。仮に関税措置が減税財源として明文化されていた場合、この撤回には議会の承認が必要となり、トランプ関税の一部は固定化する可能性があった。
ただ、2028年大統領選において民主党候補が勝利するとしても、その段階で米国がかつてのような自由貿易を志向するかは不透明だ。バイデン前政権はトランプ一次政権が離脱した環太平洋経済連携協定(TPP)に復帰せず、対中関税措置も大幅に見直すことはなかった。