(ブルームバーグ):世界最大の農産物商社である米カーギルは、米国で牛の頭数が70年ぶりの低水準に落ち込む中、人工知能(AI)を活用することで加工工場における生産量増加を図る新たな戦略を押し進めている。
ブライアン・サイクス最高経営責任者(CEO)によると、同社は独自開発したAI支援カメラ技術を使って、食肉加工工場のチームに対し、骨に残った肉の量をリアルタイムでフィードバックしている。この技術は生産性向上に寄与しており、テキサス州の施設で試験導入され、現在はより広範に展開されている。
サイクス氏は23日、アイオワ州で開催された世界食糧賞財団のイベントで「業界全体で歩留まりを1%改善できれば、食卓に2億ポンド(約9万トン)以上の食べ物が並び、人々の胃に入り、レンダリング(動物油脂や肉骨粉への処理)の量が減る」と述べた。
同社が導入したAIの活用は少々ユニークだ。加工工場では赤、黄、緑のフェイスマークで作業員に伝えられる仕組みで、「本来そぎ取れる部分がどの程度あるのかを即座に教えてくれる」とサイクス氏は説明した。
この技術導入の背景には、深刻な供給不足に伴って牛の価格が今年、前例のない水準まで高騰しているという事情がある。これにより、牛肉価格が上昇し消費者の負担につながっているほか、カーギルや競合他社のタイソン・フーズにとって利益圧迫要因となっている。
こうした状況を受け、トランプ米大統領は今週、牧畜業の奨励と国内牛肉生産の強化を掲げる計画を発表した。価格抑制に向け、アルゼンチンからの牛肉輸入の拡大も検討されている。
サイクス氏は、AIが農業分野で人に取って代わるとは予想しておらず、むしろ技術は労働者を支援するという。同氏は「もしあなたが取って代わられるとしたら、それはテクノロジーと積極的に関わろうとする誰かによってだ」と語った。
原題:Cargill Taps AI to Get More Meat Off Bone as US Herd Slumps (1)(抜粋)
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