司法はトランプ関税を止められるか?

5月28日、米国際貿易裁判所(一審)は国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づく一連の関税措置(全世界への相互関税や対中国・メキシコ・カナダ関税)を停止するようトランプ政権へ命じた。

IEEPAは「異常かつ特別な脅威」に対処する権限を大統領に付与するものの、裁判所はトランプ大統領が無制限に関税を掛けることを違憲と判断した。

同判決を受けトランプ政権は即時に控訴し、翌29日に連邦巡回区控訴裁判所(二審)は一審判決の一時停止を認めた。このため、結果的に現行の関税策に変化は生じていない。

同裁判の原告には民主党系の州が含まれ、和解などが考えにくいことを踏まえると、決着は最高裁まで持ち越される可能性が高い。

なお、仮にトランプ政権が最終的に敗訴しようとも、それがどれだけの抑止力になるかは疑問が残る。なぜなら、トランプ政権にはまだ活用できるツールがあるからだ。

例えば、通商法122条は経常赤字に対処するために最大15%の関税を150日間課せる権限を大統領に付与している。

加えて、安全保障上の懸念に対処する通商法232条は鉄鋼・アルミや自動車に対する関税の根拠となっており、今回の裁判でこれらの品目別関税の妥当性は問われていない。

総じて、司法によるトランプ関税への歯止めは限定的なものでしかない。