長期的な市場拡大余地はあるものの、「自動車普及の天井」の懸念も

長期的には、経済成長による家計所得の伸びを背景とした自動車の普及、いわゆるモータリゼーションが新興国の自動車市場拡大の源泉となる。インドとインドネシアにおいても長期では、モータリゼーションによる拡大トレンドが続くと予想される。

両国の自動車普及率(1000人あたりの自動車保有台数)は現時点でそれぞれ63.6台、82.6台と、同じアジアの新興国である中国の218.8台やタイの277.4台に比べて低く、今後の普及の余地は大きい。自動車普及率は、時代や地域によって差があるものの、一人当たりGDPがおおむね3,000~5,000ドルを超えると、急速に高まる傾向にあるとされる。2023年の一人当たりGDPを見ると、インドは約2,500ドル、インドネシアは約5,000ドルと、「節目」の所得水準に差し掛かっており、今後所得の伸びに伴って、自動車普及が加速していくことが期待される。

ただし、両国の普及率が、将来的に日本や米国のように600~800台の水準に到達するかは不透明である。韓国と台湾は、所得水準で他のアジア諸国に大きく先行し、一人当たりGDPが3万ドル以上の高水準に到達しているものの、自動車普及率はそれぞれ492.5台、360.9台と、日米と比較して伸び悩んでいる。とくに台湾については、1994年に普及率が200台の水準に到達して以降、伸びが鈍化している。インドとインドネシアについても同様に、普及率が一定水準に達した段階で伸び悩む、いわば「自動車普及の天井」に直面するおそれがある。その要因として、①高い人口密度、②急速なEV(電気自動車)シフト政策があげられる。次節でその詳細を見ていく。