「風、薫る」藤原季節の存在感
田幸 「風、薫る」(NHK)がすごく頑張っていると思います。それまでの日本になかった看護婦という職業をいかに自分たちで立ち上げていくか、その試行錯誤を非常に丁寧に描いています。
医療のシーンは、多くの映像作品で医事考証をなさっている杏林大学の冨田泰彦先生が監修されています。今の私たちが見ると、不衛生で恐ろしいような手術シーンが出てきたりします。今までのドラマで見たことがない、ネクタイをしてシャツにベストで、素手で手術する。当時は、それが本当に普通だったんだというのが見えてきます。
そもそも「社会」という言葉も日本にはなく、西洋から入ってきたもので、言葉ができたことで概念が理解されていく。そういう価値観の導入とか、その概念に対する理解、医療と文化と社会といろいろなものが新しく日本に導入されていく様子が、すごく丁寧に描かれているなと思います。
あと、朝ドラで藤原季節さんが見られるのはうれしいですね。親がいなくて、生きるために詐欺師になった役なんですが、主人公の1人と出会ってちょっとずつ変わっていくんです。出演シーンは少ないのに、彼が出てくるたびに、すごく盛り上がる。相変わらず詐欺師はしているんですが、悪い権力者からお金を取るようなところもある。うまい起用法で、いい人を起用しているなと思いながら見ています。
倉田 詐欺師なので、悪い人ではあるんですが、憎めないいいキャラクターを演じていらっしゃいますね。二人が出会って、看護学校に入るところから「頑張れ」という気持ちが生まれてきました。
同じNHKの「ムショラン三ツ星」は、刑務所での「食」を描いて興味深い作品でした。刑務所は1日の食事代が五百何十円とか決まっているとか、配膳も差があってはいけないとか、一般社会とは違うルールで運営されているのは当たり前ですが、そういったところをかいま見られるのもよかったです。
栄養士と一緒に食事を作っていた受刑者たちがどう立ち直っていくか、その更生の過程や、出所後の人生も最後で描かれていて、罪を犯してしまったけれど、しっかり償って社会に戻っていく理想的な希望に満ちた世界が描かれていました。
影山 いい作品でしたけれども、服役中の方々が妙にいい人過ぎるというか、もうちょっと何か「噛み応え」があってもいいのかなとは思いました。一方で僕がいつも許容しているところですが、ファンタジースタイルで描いているから、それでいいのかなとも思いますが。
<この座談会は2026年7月2日に行われたものです>
<座談会参加者>
影山 貴彦(かげやま・たかひこ)
同志社女子大学メディア創造学科教授 コラムニスト。
毎日放送(MBS)プロデューサーを経て現職。
朝日放送ラジオ番組審議会委員長。
日本笑い学会理事、ギャラクシー賞テレビ部門委員。
著書に「テレビドラマでわかる平成社会風俗史」、「テレビのゆくえ」など。
田幸 和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経て、フリーランスのライターに。役者など著名人インタビューを雑誌、web媒体で行うほか、『日経XWoman ARIA』での連載ほか、テレビ関連のコラムを執筆。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『脚本家・野木亜紀子の時代』(共著/blueprint)など。
倉田 陶子(くらた・とうこ)
2005年、毎日新聞入社。千葉支局、成田支局、東京本社政治部、生活報道部を経て、大阪本社学芸部で放送・映画・音楽を担当。2023年5月から東京本社デジタル編集本部デジタル編成グループ副部長。2024年4月から学芸部芸能担当デスクを務める。
【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。














