2026年4月期のドラマについて、メディア論を専門とする同志社女子大学・影山貴彦教授、ドラマに強いフリーライターの田幸和歌子氏、毎日新聞学芸部の倉田陶子芸能担当デスクの3名が熱く語る。「タイムリープもの多すぎ問題」も浮上して…。
野呂佳代に励まされた気持ちになった「銀河の一票」
影山 まずは何といっても「銀河の一票」(カンテレ)から。
倉田 今期ナンバーワンでした。周りの友人と、これだけ盛り上がった作品はこの数年なかったと思います。見た後に、感想とか自分の受けとめ方を誰かと話したくなる作品でした。
黒木華さん演じる茉莉は与党幹事長である父親の秘書を務めていたんですが、諸事情あってそこをやめ、家も出て、一人で路頭に迷うような形になったときに出会ったのが、野呂佳代さん演じるスナックのママのあかりさんです。
その茉莉があかりに「都知事になって下さい」という突拍子もないオファーをして、そこから物語が始まります。都知事選に向かって、周りを巻き込みながら、「チームあかり」ができ上がっていく。選挙をエンターテインメントとして見せる面白さもあるんですが、選挙活動そのものより、人と人がどうやって出会い、どうやって関係を深め、その結果、社会にどういう影響を与えていくかが丁寧に描かれていて、その点にすごく魅かれました。
同世代の同僚とは毎回、見た翌日に「きのうも号泣した」、「私も」みたいな話をしていました。
影山 号泣しましたか。
倉田 脚本の蛭田直美さんが書いたせりふが一つ一つ刺さるんです。慌ただしい日常を過ごしていると、社会のちょっとした違和感や、嫌な思いをしたことを深く考えずにやり過ごすのが当たり前になっているところがあります。でもそこを立ちどまって考える、あのとき私は何で傷ついたんだろう、何であれが嫌だったんだろうと。
逆に、誰かに何かしてもらってうれしかったこともある。政治の世界で生きてきた茉莉が、スナックのママという違う世界のあかりと出会って、さりげない言葉をかけてもらうだけで、あっ、私もあかりママに励まされたような気持ちになるといいますか、そういうところがあって、せりふに号泣していました。
偶然出会った2人が関係を深めていって、都知事候補としてスカウトし「じゃ、私、出ます」となるまでの過程や、実際に選挙に向けて動き出したときに、スナックの常連の方々が、実はいろいろ手に職を持っていたりする。
影山 人物造形がよかったですね。
倉田 最初は2人だけだったのが、少しずつ仲間がふえていく。ホームページがダサいと言ったら、常連客が作ってくれたり、演説のお立ち台がないと言ったら「俺、ステージを作っていたから作るよ」というおじさんがあらわれたりする。ウグイス嬢や選挙参謀みたいな形で加わる人とか、一人一人がチームに加わっていく過程がアベンジャーズみたいでかっこよかったです。語り出したら本当にとまらない感じなんですが。
あと、宮沢賢治の世界観も含め「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」という彼の言葉も、大事にしたい言葉だけれど、日々を過ごしていく中で忘れがちじゃないですか。そこにちゃんと目配りして生きていきたい、といった自分の生き方を見直す機会を頂いたと思います。
二人だけでなく、たとえばあかりさんの前任のとし子ママが、認知症になって周りのことがわからなくなっている。そういった登場人物一人一人の人生にもちゃんと背景がある。その場面に出てきていなくても、とし子ママは今施設で何をやっているんだろうと、周りの人の人生にも思いをはせてしまう丁寧な描き方でした。さすが佐野亜裕美プロデューサーです。
田幸 ほとんどの人がぶっちぎりの1位で異論はないと思います。
影山 僕も早くにナンバーワンにしていました。














