対米・対中外交の本格論戦を

外交・安全保障も問われなければならない。台湾有事をめぐる高市総理の国会答弁は、日本の対中外交の難しさを示している。

第2次安倍晋三政権時に成立した安全保障法制は、米軍が他国から攻撃を受けて、日本の存立が危ぶまれる事態となったときに自衛隊が出動して他国軍に武力行使を認めたものだ。集団的自衛権行使の一部容認である。その法制自体が海外での武力行使を禁じた憲法に違反すると多くの憲法学者が指摘していた。

さらに安保法制に基づいて、台湾有事を想定した自衛隊と米軍との共同訓練が続けられてきたが、第2次安倍政権以降の歴代政権は台湾有事が存立危機事態に直結するという見解を表明することはなかった。国会では「具体的な言及は控える」との答弁が繰り返されてきた。いわゆる「曖昧戦術」である。

ところが、高市総理は「台湾有事が存立危機事態になり得る」と答弁。これが、「台湾は中国の一部」とする中国政府の激しい反発を生み、日本への渡航自粛など様々な規制措置が打ち出された。日本経済への影響も懸念されている。高市氏自身の発言で生じた問題なのだから、本人の責任で収拾しなければならない。

高市総理はトランプ米大統領が訪日した際には、米海軍の原子力空母に同乗し、「親密さ」をアピール。米側が求める防衛費の増額についても、補正予算に盛り込むなど日米同盟の強化を進めた。

自民党は安保法制に基づく日米同盟の強化と防衛費の拡大を唱える。これに対して、中道は基本政策の中で安保法制について「存立危機事態における自国防衛のための自衛権行使は合憲」と明記した。

総選挙では一連の対米、対中外交をめぐる議論を交わさなければならない。日本は安全保障では米国との緊密な連携が欠かせない。一方で、経済面で大きく依存する中国とも良好な関係を維持することが大切だ。米国とは民主主義、人権などの価値観を共有するが、言論の自由などが制限されている中国との付き合い方は一筋縄ではいかない。そうした中での日本外交のあるべき姿を議論し、国民に理解を求めることは政治家の役目である。