ベッセント長官の異例の投稿
アメリカのトランプ大統領と共に来日したベッセント財務長官は、片山財務大臣との会談や、その後のSNSへの投稿で、為替と日本の金融政策に、言及しました。
29日に投稿されたベッセント氏のメッセージは、「日本政府が日銀に政策余地を与える姿勢は、インフレ期待を安定させ、過度な為替の変動を回避する鍵となるだろう」というものでした。おっしゃる通り、まさに正論です。金融正常化こそが過度な円安と物価高を止めるという、いわば「利上げのススメ」です。
閣僚が他国の金融政策に直接言及するだけでも異例なのに、決定会合の日にこうした意見を表明するというのは、異例中の異例、余程のこと、と理解すべきです。利上げもしないのに為替市場へ介入など、絶対に認めないという意思表示にも受け取れます。
同時に、この注意深い言い回しは、「今回」の日銀の決定よりも、「今後」の、しかも「政府の姿勢」を、念頭に置いたメッセージにも思えます。
「もう少し見たい」を繰り返す植田総裁
植田総裁の記者会見で、私が最も腑に落ちなかったのは、9月以降の日本経済の「改善」が、現状認識や見通しに、あまり反映されていないことです。確かに、アメリカの関税政策の影響は見通しにくいものでした。しかし7月の大枠合意後、心理的な安心感が広がっただけでなく、日本企業の輸出や収益に、思ったほど影響を与えていないことが、日々明らかになってきています。企業は、これまでの円安による大きなバッファーを有しており、アメリカ経済が予想外の腰折れでもしない限り、総じて限定的な影響しか受けていないと見られます。
日銀は、景気の現状認識において、そうした「変化」のアップデートを意図的に最小化しているように思え、その点で、思考のフリーズぶりが浮き彫りになっています。














