ハト派的とみられた植田総裁会見
焦点は、「今回」よりも、むしろ「今後」にありました。しかし、決定会合後の植田総裁の記者会見は、「踏み込み」の弱いものでした。植田総裁は「予断を持っていない」などと、慎重な表現を使う場面が目立ち、12月或いは1月の利上げに、「前向き」な印象を与えることを極力避けました。
また、焦点の為替市場についても、円安への懸念を表明することもなく、淡白な印象でした。もちろん、日銀総裁が直接、為替市場の動きに言及することはご法度ですが、それでも、「円安の物価への影響を注視している」といった表現は可能なわけで、金融市場では、植田会見は「思った以上にハト派」という受け止めが広がりました。
植田会見を機に円安加速
この日、1ドル=152円台だった円相場は、植田総裁の記者会見中にどんどん円安が進み、一時154円台へと、8か月ぶりの水準まで値を下げました。高市氏が自民党総裁に決まったサプライズで円安が進んだ際は153円台前半でしたから、あっという間にこれを突き抜けたのです。
アメリカFRBのパウエル議長が、「12月利下げは既定路線ではない」と発言し、追加利下げ観測が後退する中で、日銀の利上げへの「踏み込み」が弱いと受け止められれば、為替市場で円安が進むのは当たり前です。これでは、物価高対策をいくら打っても、物価高は止まらなくなってしまいます。














