「ただちに」はどんな場合でも最適解なのか

では、遠地津波をめぐるJNN特別番組を含めた放送での対応は、はたして日本付近で発生する津波と同じで良かったのか。津波警報が発表された7月30日の放送を振り返り、今後に向けての課題を記す。

結論から言うと、酷暑下で長時間の避難が求められる災害について、事前にもっと想像力を働かせ、しっかり準備しておくべきだった。

津波警報が発表された場合、JNNは速やかに特別番組に移行する。TBSのアナウンサーは「ただちに避難して」「高い場所に逃げて」と何度も繰り返し呼びかけ、画面には津波警報と注意報の発表エリアを示す日本地図と「津波危険」「逃げて!」のバナーが常時表示される。冒頭の写真のように。

だが前述のとおり、今回は遠地津波で、避難のリードタイムが通常の津波の場合よりも比較的長かった。なので、津波からいち早く避難することが大前提であることに変わりはないが、避難を呼びかけるにしても「ただちに」「今すぐに」「大至急」一辺倒ではない伝え方があったと今になって思う。

また、津波警報が長時間継続することは初期段階である程度わかっていたし、沖縄県の八重山地方から東北地方にかけての広い範囲で厳しい暑さになることも予想されていた。当日は熱中症警戒アラートが、津波警報が発表された13都道県のうち5県に、津波注意報が発表された10府県のうち7府県に出ていた。

したがって、少なくとも特に直射日光を避けるスペースの少ない高台や空調設備のない避難所に長時間滞在することになる可能性について、早い段階で指摘しておきたかった。その上で熱中症防止対策をしっかりとってもらうよう強く呼びかけ、最初の避難先から比較的涼しく過ごせる別の安全な避難先に途中で移動する選択肢もあることなどを併せて示せればなお良かった。以上の点は、必ず改善して次に生かしたい。

高台に避難しようとする人たち(7月30日放送の「NEWS23」から)