「亡くなってでもこうして家族を助けてくれているので、感謝していますね。すごいですよね、いなくなってるのに。普通は助けられないじゃないですか」

去年の豪雨で愛娘の翼音(はのん)さんを亡くした喜三鷹也さん(43)が、そうつぶやいた。喜三さん家族は、翼音さんが残した言葉を胸に今日を生きている。

去年9月21日、石川県の奥能登地域を記録的な豪雨が襲い、住宅4棟が流された輪島市久手川町では、複数の住人の安否が分からなくなっていた。中学3年の喜三翼音さん(当時14)もその一人。

連日、日の出とともに自衛隊や警察、消防が数百人態勢の人海戦術で懸命の捜索を続け、家族も現場で活動に加わった。

警察、消防、自衛隊による大規模な捜索活動 (去年9月、石川・輪島市)

当時、自宅に一人でいた翼音さんを心配した父・鷹也さんがスマートフォンのビデオ通話で連絡を取ると、そこには家を覆うように流れる土砂が映っていた。

「長袖・長ズボンを着て」

万が一、自宅が流された時にけがが少ないようにと鷹也さんが伝えた言葉だ。