去年11月のルーマニア大統領選は、無名の泡沫候補(写真)が得票率1位に躍り出るというまさかの結果に。SNSを駆使した選挙戦がもたらした大波乱だが、その裏でのロシアの関与が疑われ、憲法裁判所が選挙のやり直しを命じた。こうした混乱は、周辺の諸国にも衝撃を与えている。MBS記者でJNNパリ支局の仁熊邦貴支局長が報告する。
得票率1位になった候補に多くの市民が「えっ、誰?」
去年11月24日にルーマニア大統領選挙の1回目の投票が行われた。これまでほぼ無名の存在だった極右のカリン・ジョルジェスク氏が得票率23%で最も票を集めて決選投票に駒を進め、本命視されていた与党・社会民主党のチョラク首相は得票率19%で、まさかの3位に沈み敗北した。
選挙の1か月ほど前に実施された多くの世論調査では、支持率が1%にも満たなかったジョルジェスク氏が、現職の首相を破るという結果に、ルーマニア国内では動揺が広がった。

選挙結果が伝えられると、多くのルーマニア人は「えっ、誰?」と口にしたという。
ブカレストに住むシギナシ・ミハエラさんも、その一人だ。多くのルーマニア人はジョルジェスク氏のことをほとんど知らなかったというのだ。シギナシさんは「みんなパニックになっていて、テレビや新聞の報道では見たことがない人だった」と話す。
選挙期間中、国内の主要メディアは、1回目の投票で2位になった野党の党首や敗北した現職の首相らを取り上げていたが、泡沫候補だったジョルジェスク氏についてはほとんど報道されていなかったという。
しかし、若者の間では知られた存在だったようで、シギナシさんが友人から聞いた話では、子どもがTikTokでジョルジェスク氏のことを知っていて、選挙戦終盤になると、次々とスマホの画面に登場してきたというのだ。