「戦争を続けるために利用されるのは辛い」

「ここは、いまも毎日砲撃が続いています。怖いです。どうしてこんなことを始めたのか。どうして誰も止められないのか。子どもたちが死んでいる。私はただ平和が欲しいだけです。平和に戻りたい…早く、終わってほしい

おばあさんから聞いた、真意。それは、ロシア側が描くものとは、大きく異なるものだった。おばあさんは、こうも付け加えた。

「戦争を続けるために利用されるのは辛いです」

ロシアは今回、SNSなどを駆使してプロパガンダを拡散し、世論の支持を集めようと必死だ。自分たちの行為を正当化しようと、情報戦に力を注いでいる。アンナさんは、そんなプロパガンダの被害者なのだと、強く感じた。

アンナさん宅 ビニールやタオルで覆れている

■「いらないわ!」住人から浴びせられる厳しい視線

インタビューをしていると、配給の食料を受け取る時間がやってきた。15分間の道のりを、私たちも同行させてもらった。

その間、アンナさんに浴びせられていたのは、近所の住人からの厳しい視線だ。
誰も、アンナさんに声をかけない。挨拶すらない。他の住人はまとまってお喋りをしながら向かっているが、アンナさんは一人で歩く。

帰り道、アンナさんは知り合いの女性を見つけた。家を出る際に持ってきた、自宅で育てている袋いっぱいのキイチゴを渡そうとした。

「いらないわ」


女性はそう言って、受け取りを断った。アンナさんはそれでも、「どうぞ、受け取って」と言って渡そうとする。しかし女性は、何度も拒否した。

アンナさんが諦めて家路につく時の悲しそうな、寂しそうな表情に、胸がえぐられる思いだった。