地震からの「復活」 諦めていた女将の花器
今回、谷口常務が中村さんに修復依頼したのは、母親である女将が大切にしていた「花器」。季節の花を生けて玄関や客室に飾り、利用客をもてなしていた器だ。しかし、地震で花器の一部が欠けてしまった。保管場所もないため、廃棄するしかないと考えていたという。

器を預かって2週間後、中村さんは花器の「金継ぎ」を終えて、谷口常務に器を返却した。欠けた部分の形を生かし、海岸に浮かぶ太陽や月をイメージして「金継ぎ」したと中村さんは説明する。地震があった日から、「これは壊れずに無事だ」と残ったものを見つける日々だったという谷口常務。「金継ぎ」された器を見て、こう話した。
旅館「輪島温泉八汐」谷口浩之常務
「これは生き残ったというよりも、復活したって感じ。諦めていたものが、『金継ぎ』で復活するという体験をすると、元気や勇気がもらえて嬉しい。女将も花器が直って喜ぶと思う」