◆命令通り機械的に刺した
前回紹介した被告人質問の前半の部分で、炭床静男は「命のやり取りをしている戦場」で、当日、戦死した兵士の火葬をしていたとしても復讐の気持ちなどは湧かず、「戦闘行為の一つ」という認識で、杭に縛られたロイド兵曹を銃剣で刺したと述べている。
被告人質問が行われた日には、弁護側から静男の口述書が証拠提出されているが、その下書きであろうと思われる文書には、
「二十人位突刺したと思う頃、榎本中尉が私に『炭床兵曹長、引込でいないで、模範を示せ』と命令しましたので、私は近くにいた兵の銃を取り、ただ、命令通り、機械的に一回突刺しました。私が突いた後、5,6名の兵が突いた様に記憶します。
私は前述の通り、榎本中尉の命令により、飛行士の遺体を一回突刺しましたが、これは絶体命令により、真にやむを得えない行動であります。」
と記されていた。

◆だから戦争はしちゃいかんです
資料をざっと読んでいただいた後、健二さんと浩さんに、死刑宣告時の写真をお見せした。
ディレクター「これが死刑宣告を受けていらっしゃるときの写真です。」
健二さん「ああ、これが。」
浩さん「だまってこれ、(死刑の宣告を)聞いとったんやろな。」
健二さん「まあ、通訳が通訳しただろうから。残念は残念だったろうな、死刑判決を受けた時は。なんでって思ったかもしれんけど。だから戦争はしちゃいかんですね、そう思います。ほんと。人間がおかしくなる」
浩さん「誰も幸せになっとらんですよね。惨殺されたアメリカの飛行士にも当然家族がおられて、なんでこんなところで殺されてって、なるでしょうしね、殺された米兵の家族から考えれば、関わった者はみんな殺してくれってなるでしょうね」
