◆自分が突いたのは命令されたから


<炭床静男被告人質問1948年2月12日>外交史料館所蔵

(炭床)自分が突いたのは榎本中尉に命令されたからだ。間接命令とか直接命令とかの言葉は分からない。福岡(での調べ)では榎本の命で突いたと言い、榎本も居るから会わせてくれと要求し、会ったら榎本も命令したと言った。自分は命令の点では強制されなかったが、他の点で強制された。
又、私の知らぬ中に挿入された箇所がある。事実と違っているので、起訴後、翻訳されたのを見てすぐ分かった。弁護側口述書で自分は(搭乗員を)殴ったと言ったことはない。

炭床静男は、米軍(検事)側から録られた調書について、弁護人に事実と違うことが書かれているということを訴えていた。
法廷でもそれについて述べている。

横浜軍事法廷(米国立公文書館所蔵)

◆虚偽の調書を作成され「嘘つき」と


<炭床静男被告人質問1948年2月12日>

弁護人の訊問に対し
(炭床)昭和22年7月14日頃、検事側から巣鴨で陳述書を取られ、相手は福岡で調べた通訳であった。日本文の書式を示され、この通り書けと言われた。内容は福岡での口述書は脅迫されず、自由意志で作成したものであると言う意味のもので、自分は全然違うと抗議し、福岡で作られたものは責められたもので真実ではない。
訂正してくれなければ、その様なものは書けぬと言った所、あれは他の検事に渡してあるから、訂正出来ぬ、違う所があれば法廷で言えと言い、訊ねると法廷で発言する機会があると言うので書いた。
日付が昭和22年4月15日前後となっていたので、その頃は石垣島に居たと言うと20年の誤りだから20年と書いてくれと言い、銃殺を書いてあったので、刺殺でないかと言うと、そうだ、刺殺と直してくれと言うので直した。私より先に書いた者は皆「20年」と「刺殺」が直されたはず、それは法廷で訂正する約束の下で書いたものであり、真実でない。

検事の訊問に対し
(炭床)法廷まで待てぬと主張したが、訂正出来ぬと断られた。巣鴨では脅迫はされなかった。法廷で訂正出来るとの話でなければ書かなかった。巣鴨で書く時、こんな物を書けば、(戦犯裁判で判決を下す米軍の)委員会で嘘つきと思われるとは思わなかった。事実を述べれば信じて貰えると思った。嘘が書いてあるので初め書けぬと断ったのだ。

石垣島事件の公判概要(外交資料館所蔵)