市場を変えた3つの要因
しかし、時を経て市場は再び変化しました。
スマートフォンやスマートウォッチの普及により、低価格帯の時計市場は大きく侵食されました。
それに反比例するように、高級時計が成長の牽引役となっていったのです。
販売本数で見ると、低価格帯の時計は減少傾向にあります。
しかし、金額ベースで見ると、高級時計が収益に占める割合は、低・中価格帯と比べて拡大し続けています。
この市場の変化は、中価格帯のブランドを多く抱えるスウォッチグループにとって、非常に不利に働きました。
そして、近年の苦境をさらに深刻なものにしているのが、以下の二つの要因です。
1. 中国市場の冷え込み
スウォッチグループの売上は、アジアが全体の53%を占め、そのうち中国だけで27%を占めています。
しかし、中国市場は消費マインドの低下により、大幅に冷え込んでいます。
この消費の落ち込みは高級品業界全体に及んでいますが、特に中価格帯のブランドが多いスウォッチグループは、大きな打撃を受けています。
中国市場の回復には時間がかかると見られており、今後も厳しい状況が続く可能性があります。
2. トランプ関税
さらに追い打ちをかけたのが、アメリカによるスイスからの輸入品に対する39%という高関税です。
これは、事前に予想されていた31%を上回るものであり、アメリカが先進工業国に課している中でも最高水準の税率です。
高級品はすでに過去5年間で軒並み価格を上げており、さらなる値上げの余地はほとんどありません。
この関税は、スイス時計メーカー、特にスウォッチグループにとって大きな痛手となっています。
