また、一昨年は雨季(モンスーン)の雨量が下振れしたことに伴う農業生産の低迷を受けた食料インフレに直面し、中銀(準備銀行)は引き締め姿勢を維持せざるを得なかったものの、昨年はそうした影響が一巡したほか、雨季の雨量も例年を上回ったことで物価は落ち着きを取り戻すことが期待された。しかし、現実には足下のインフレは中銀が定めるインフレ目標の中央値(4%) を上回る推移が続いている上、異常気象の頻発を理由に生鮮品や穀物などの食料品価格は高止まり、ないし上昇が続くなどインフレ圧力がくすぶる状況にある。
そして、国際金融市場での米ドル再燃を受けて足下のルピー相場は調整の動きを強めて最安値を更新しており、輸入物価を通じたインフレ増幅が懸念されるなか、中銀は通貨防衛を目的とする為替介入を断続的に実施しているとみられる。他方、昨年7-9月の実質GDP成長率は前年比で+5.4%、前期比年率ベースでは+1%未満に留まり、物価高と金利高の共存長期化を受けて景気に急ブレーキが掛かる動きが確認されるなか、先月には中銀ダス前総裁が退任して後任に金融政策に対する見方が不透明なマルホトラ氏が就任し、中銀が利下げに動くとの観測が強まり長期金利は低下しており、ルピー安の動きに拍車が掛かる一因になっているとみられる。
よって、足下のインド金融市場は通貨、株式、債券のすべてに売り圧力が掛かる『トリプル安』に直面していると捉えられる。