このところの国際金融市場を巡っては、昨年11月の米大統領選においてトランプ氏が勝利したことを受けて、同氏の主張する政策に加え、関税を『ディール(取引)』の材料に駆使する手法を理由に米国のインフレが高止まりするとの見方が強まっている。こうしたことから、米FRB(連邦準備制度理事会)は昨年後半にインフレ鈍化を理由に利下げに動いたものの、先行きについては利下げペースの鈍化、ないし利下げが困難になるとの見方が強まり、米ドルの動きが再燃している。さらに、米トランプ次期政権が関税の再強化に動くとの思惑は、米中摩擦のさらなる激化を招くとともに、底入れが期待された世界貿易を再び萎縮させるとの見方に繋がり、世界経済の足かせとなる懸念が高まっている。こうした動きは、経済構造面で相対的に輸出依存度が高い新興国にとって景気の足かせとなることが懸念されており、株式も下振れするなど資金流出圧力に晒されている。
他方、経済構造面で外需依存度が相対的に低いインドについては、こうした悪影響を受けにくいと見込まれるものの、足下のインド金融市場は海外への資金流出圧力に晒されるなど難しい状況に直面している。インド株を巡っては、ここ数年は経済の成長期待を追い風に上昇してきたほか、昨年の総選挙では与党BJP(インド人民党)は議席を減らすもモディ政権は無事3期目入りを果たし、その後も上値を追う動きをみせてきた。しかし、昨年9月末を境に上昇基調が続いた流れは一変するとともに、足下においても下値を探る展開をみせるなど状況は大きく転換している。その背景には、中国当局が政策転換により景気下支えに動く姿勢をみせたことで低迷した中国本土株が大きく底入れし、折しもインド株の割高感が意識されたことも重なり、外国人投資家の間に投資対象となる新興国株の組み換えが行われたとみられる。さらに、一昨年のインド株を揺さぶったいわゆる『アダニ問題』を巡って新 たな疑惑が噴出しており、インド株を取り巻く状況が厳しさを増すなかで外国人投資家の間でインド企業に対する評価が悪化することが懸念された。