消費者のニーズに応える動きは、老舗製麺所でも広がっている。
1953年創業、沖縄市の知念製麺所。ここでは、これまで全体の1割ほどだった生麺は、今は2割に伸びてきている。

「増えてますね、やっぱり。食堂とか、そば専門店がやっぱりメインですね」
2代目の知念慶太さんは26歳のとき、祖父母の後を継いだ。生麺の需要がじわりじわりと増えるが、昔ながらの製法で作るゆで麺の味も、残したいと考えている。それには理由がある。
大量に売れ、セメント袋で麺を運んだ時代
知念製麺所の先代は、正吉さん(84)と妻のトシ子さん(85)。
正吉さんは中学生の頃から、母が営んでいた製麺所を手伝ってきた。その頃から変わらないのが、ゆでた麺に油をまぶす工程だ。

「麺がくっつかないために。昔の人が考えたんじゃないですかね」
麺は、元々セメントの粉が入っていた袋に代わりに麺を包んで配達していたこともあったのだそうだ。先代ご夫婦が続ける。
「戦後の最高のご馳走ですよ」「米軍の給料日には、今なら2、3キロの注文もないような店でも、朝5時~6時から、60キロから70キロの麺を注文していた。那覇からも配達が来た」