大分市のセント・ルカ産婦人科では、2007年から妊孕性温存治療のため、卵子や受精卵の凍結保存を行っています。これまでに女性のがん患者39人が卵子や受精卵の凍結を選択。このうち3人が出産しました。また男性では98人が精子の凍結を希望して、このうち16人の子どもの出産につながりました。

病院の宇都宮隆史理事長は「患者が将来の選択肢を残して治療に取り組めることが大切」と強調します。
(セント・ルカ産婦人科・宇都宮隆史理事長)
「がんの患者さんからしたら、がんの治療に一生懸命になる。『がん治療』と『将来の子どものこと』の2つのことが重なるので大変です。ただ凍結保存のことが、患者さんにまだ知られていないのが現状です。今では両方うまくいくような技術があるんだよっていうことをみんなに知ってもらわないといけない」

宇都宮理事長は、生殖医療の発展で卵子凍結が高い生存率で可能となったといいます。一方、妊孕性温存治療について、セント・ルカ産婦人科に寄せられた女性患者の問い合わせ件数は年間平均で3.5件。まだまだ周知されていないのが課題だと考えています。
「妊娠のチャンスは残しておくという時代が来ている」
(宇都宮隆史理事長)
「精子や卵子を凍結保存して、必ず100%妊娠につながるというわけじゃないけれども、チャンスは残しておくという時代が来ている。患者が希望をもって将来設計ができるように、私たち医療関係者も患者に知ってもらえるよう、情報提供につなげることが大切です」
12月1日には大分市で医療関係者を対象に「がん・生殖医療フォーラム大分」が開催されました。妊孕性温存治療の選択肢を患者に届けるには、医療関係者からの周知が不可欠のため、その意識向上を図る目的で実施されました。今後は一般参加者を対象にしたフォーラムの開催も検討しています。