“凍結卵子”で妊娠・出産「こんなにかわいいんだ、産んでよかった」
抗がん治療の影響などで生殖機能が変化してしまい、治療後、不妊に悩むケースがあります。「妊孕性温存治療」は治療に入る前に患者の精子や卵子を凍結保存します。そして、がん治療の後の妊娠へ向けた生殖医療で用いる療法です。
悪性リンパ腫の発症から2年後の2017年に治療に目途が立った佑美さん。その時、主治医から「再発しやすい病気なので、子どもが欲しいなら妊娠に向けた生殖医療に取り組んだ方がいい」と伝えられました。この言葉を受け、佑美さんは夫とともに、凍結保存していた卵子で妊娠に向けた生殖医療を開始しました。そして翌年、第一子となる長男を授かりました。
(木下佑美さん)
「先生に言われるがまま進めたので、いざ妊娠した時には実感があまりなかったです。ちゃんと母親になれるか不安だったんですけど…。いざ産まれたら『こんなにかわいいんだ。産んでよかったな』っていうのは本当に感じます。子どもがいる楽しみとか幸せを全部この子が教えくれました」

(夫・昌樹さん)「本当に今、子どもが宝物になっている。保存を選択してよかったと思います」
国立がん研究センターによりますと、0~14歳までの小児世代、15~39歳までのAYA世代(Adolescent and Young Adult 思春期・若年成人)で、がんと診断を受けるのは年間で約2万3千人いるとみられています。
また、2018~19年に全国のがん診療連携拠点病院などでがんと診断を受けた8万3516例を調査したところ、小児がんでは、女児(45.2%)よりも男児(54.8%)の方がやや多くなっています。一方AYA世代では、女性(74.8%)のほうが、男性(25.2%)を大きく上回っています。がん治療の技術が進歩する中、医療現場では患者の人生設計を考えた対応の必要性も指摘されています。