病院幹部「僕らも昔の世代の人間やから…意識が違う」「勉強やん、自分を鍛えるための」

実は、晨伍さんが自殺する1年前の2021年5月、別の内科の専攻医5人が、病院幹部に過重労働を訴えていたのだ。

病院の内部文書
「4月の専攻医の平均残業時間は、凡そ100時間を超えていたと考えられます。検査漏れ(患者への検査忘れ)も多くなってきており、このままでは患者さんの命に係わると考えられるので業務緩和をよろしくお願いいたします」

具体的な業務の改善を提案し、過酷な勤務の実態を訴えていた。

この時の音声記録も残されている。

当時の専攻医の音声
「実際働いてみると、“うっ”と思うところがあり、どうしたらもっと良くなるかなって。業務緩和をよろしくお願いいたします」

これに対し、病院幹部は、働き方の改善を検討するとしながらも、「医師の業務の半分は、勉強だ」などと話した。

病院幹部の音声
「ちょっとだけ言いたいことは、僕らも昔の世代の人間やから、先生らと意識が違うんやけど、主治医していると、今日あの人どうなったかなって見に来たいことってあるやん。それは主治医として心配、あるいは興味として、自分の入れた薬で、カリウムがどんだけ上がっているか、下がっているか見たいやん。半分は勉強やん。自分を鍛えるための

専攻医らは同じ文書を示し、具 院長にも掛け合ったが、院長が対策をとった形跡はなく、労働環境は変わらなかったという。

甲南医療センターの専攻医は実際、どのような働き方をしていたのか。

私たちは、晨伍さんが働いていた当時、この病院にいた医師から話を聞くことができた。

当時勤務していた医師
「過労死ラインと言われる100時間を超えている若手医師はほとんど。自己研鑽と呼ばれる自主的にやっていることかと言われますと、患者さんの診療が夜遅くまで長引いているとか、患者さんのために、休んでいる時に家から呼び出されるとか、診療にあたる時間が、時間外労働の中でもほとんどなんですね」

しかし、この医師は、働いた時間をそのまま「時間外労働」として申告できなかったという。

当時勤務していた医師
「私も、管理職の先生から、50時間以上残業手当の申請をつけないようにと言われたこともありますし、残業代を削減するという意味で、働いていても、働いていないかのように見せかけるような職場の空気がありました」

また、別の職員は、医師が残業時間を過少申告するよう指示されていた背景は、病院の経営状態があったと明かす。

病院に勤務していた職員
「コロナでだいぶ赤字だったみたい。それでかなり経営状態が悪いって話はよく院長先生含めて、上からお達しがあった。できるだけ無意味な“超勤”(超過勤務)をつけるなっていうところだと思います。仕事は全部、時間内で終えるように頑張れっていう…できないんですけどね」

2023年8月、晨伍さんの母・淳子さんと、兄・章伍さんは、初めて記者会見を開いた。社会に訴えることで、病院が、説明や謝罪をしてくれるのではないかと期待したからだ。

高島淳子さん
「いまだに甲南医療センターからは、何ら誠意ある対応は得られていません。もう息子は・・・優しい上級医になることも、患者さんを救い、社会に貢献することもできません」

しかし、病院からは何の連絡もなかった。