足が出ない、支えてくれた周囲の人たち

しかし、長い時間水分が取れなかったことで、足の疲労はピークを迎えた。栄養ゼリー、痙攣防止の漢方、冷却スプレー、できうる対処を次々と行うものの、足が前にでない。少し走っては止まり、歩く。こうした状況が数キロ続いた。

しかし足を止めなかったのは沿道の応援があったからだった。

沿道の人から冷却スプレーを借りて歩道で吹きかける、そしてストレッチを行うと、周囲の人たちが少し離れた距離から嘉アナを取り囲む。

「頑張って、でも無理はしないで」
「大丈夫ですよ、絶対に完走できますよ」

小さい男の子は無言で近づき、うちわに書かれた「かんそうがんばれ」の文字を見せ、励ましてくれた。

嘉アナ
「ありがとうございます、頑張ります」

もう短い言葉しか返せない状態だった。キラキラしたオーラも陰っていた、しかし笑顔を作り、苦しい顔は見せず、声援に応え、一歩ずつ足を前に進めた。

残り10キロで時刻は午後1時45分。制限時間まで1時間半だった。間に合うかギリギリというところだった。「ここからは無理はしないでいい、走れる部分は走って、きつくなったら歩くでいい」とゴールまでの方針を決めた。足がつったら取り返しがつかないと、お互いに感じていたのだと思う。

「漢方がきいてきた」「さっき飲んだゼリーがきいてきた」と元気になっては、すぐにダウンする嘉アナ。でも少しずつゴールが近づくにつれ表情は明るくってきていた。

「はいはい、頑張りましょう、間に合いますよ」

後ろから声をかけてきた小柄の女性。実は22キロあたりで嘉アナと私が救助した人だった。

中間制限地点を越えてからのコースは狭い片側1車線で、ランナーが膨らんでしまい、とても走りにくい場所。嘉アナと私が沿道の人から冷却スプレーを借りてケアをしていた時に、その女性は後ろのランナーと交錯して、顔から崩れ落ちた。ふらふらと立ち上がれない女性を2人で抱えるようにして道路の縁石に座らせて、ケガの状況や意識の確認を行い「無理はしないでくださいね」と声をかけていた。

声をかけてきたランナー
「私はこれまでに4回も完走しているの、なのでペースは分かっている。今のあなたのペースでいけば大丈夫、絶対に間に合うわ、頑張りましょう」

彼女が嘉アナウンサーのことを知っているのかは分からないが、その一言で勇気づけられた。「足を止めなければ絶対に間に合う」。そう言い聞かせながら少しだけピッチをあげた。