■アメリカの3つの意図とは…

ホラン千秋キャスター:
アメリカの意図について教えてください。

慶應義塾大学総合政策学部 廣瀬陽子教授:
主に三つあるのではないかと思います。まずウクライナを勝たせたいというのは間違いないと思います。しかしロシアにもある程度の面目を保たせる必要があり、ロシアをあまり刺激しない形でのウクライナの勝利というところで最後は交渉へ持っていきたいということが言えると思います。

次に、ロシアが自滅していくのを望んでいるところだと思います。ある程度の部分については紛争を長期化させるような形でロシアが自ら弱っていき、そして今後アメリカが中国との関係に注力していけるような環境を作っていきたいのではないかと思います。

他方でプーチン大統領をこのまま温存しておくのも一つの考えだと思います。というのは、ロシアが非常に混乱してロシアからも多くの難民が出てくるなどということになれば、世界中が大きな混乱に巻き込まれる可能性があります。そこを防ぐためには、ロシアが壊滅状態になることは防がなければいけません。そういう意味ではプーチン大統領がまだかなり国民の支持を得ていることもありまして、(プーチン大統領が)残る形でロシアの再建をしてもらう、そういうところが一番アメリカとしては望ましいシナリオとなってくると思います。

ホランキャスター:
とても絶妙なバランスで着地させようというふうにしていることが感じられるのですが、それ自体は可能なのでしょうか?

廣瀬教授:
非常に難しいと思います。そもそもどれぐらいのウクライナの勝ち方で交渉に持っていくのかというところからも、絶妙なバランスというのが必要でして、その絶妙さを目指すために長距離のミサイルは提供しないというアメリカ側の配慮もあるわけです。この先はアメリカの関わり方というのも機微な状況になっていくと思います。

経済アナリスト 森永卓郎さん:
すぐに決着させようとしていないのは、廣瀬先生のおっしゃる通りだと思います。アメリカは世界最大の兵器生産国で、世界最大の産油国なので、この戦争でメリットを受けています。だからそんなに経済に悪影響はないです。ただ、交渉で終わらせるということを考えると、このままいくとウクライナ東部2州はロシアに取られてしまうのではないかという気がするのですが、それでいいのかなと私は思ってしまいます。

廣瀬教授:
東部2州が取られるというシナリオはアメリカにとって良くないと思います。ただ、最近の発言を見てみると、例えば元アメリカ国務長官のキッシンジャー氏がクリミアについて「ウクライナは諦めるべき」というようなことも言っておりまして、ある程度ウクライナに痛みを負わせるような用意もあるように思います。