「アメリカの狙いについて明確にしたい」。5月31日、ニューヨーク・タイムズにバイデン大統領が寄稿しました。アメリカがウクライナへ高機動ロケット砲システムを供与すると発表するなど、新たな動きがみられるなか、その狙いは一体何なのか。専門家は3つの意図があるのではないかと指摘します。
■アメリカの“方針”は…
井上貴博キャスター:
アメリカのバイデン大統領が5月31日、ニューヨーク・タイムズに寄稿しました。アメリカの今の考え方や立ち位置について綴っています。
「この戦争は『外交によってのみ終結させることができる』」
「アメリカはプーチン大統領を失脚させようとはしない」

武力ではなく外交、やはり政治力だということ。そしてプーチン大統領に配慮を見せながらのメッセージということも言えそうです。
■バイデン大統領の“狙い”は…
米軍の派遣についてバイデン大統領は「アメリカや同盟国が攻撃されない限り、米軍の派遣をしたり、ロシア軍を攻撃したりしてこの紛争に直接アメリカが関与することはないだろう」としています。このあたりは今までと変わらない姿勢で、NATOとロシアの戦争を求めていません。

ウクライナへの武器供与については「戦場で標的を正確に攻撃できるよう、より高度なロケットシステムなど提供することにした」としています。これはウクライナがロシアに勝つということではなく、ウクライナがロシアと交渉する上で有利な立ち位置に立つために、その部分の線引きを考えながらアメリカとしては武器を供与していきますという姿勢です。

■アメリカが供与するのは…
今回新たに供与されるのは、高機動ロケット砲システム「ハイマース」です。射程が約80キロ。ウクライナ側としてはもっと射程が長距離のものを欲しているのですが、アメリカはこの射程のものを供与しました。
ニューズウィークによると、アメリカ・政府高官は「ウクライナ国内のみで使用し、ロシアの領土への攻撃には使わないことをウクライナ側に約束させた」ということです。
これをロシア側の領土への攻撃で使われてしまうと、今度はアメリカなどを巻き込んだ世界大戦になってしまいかねない。そのギリギリのバランスということなのかもしれません。

武器が供与された場合、ロシアのラブロフ外相はけん制の意味で「第三国が紛争に巻き込まれる可能性」を指摘しています。