「時計の針は20世紀へと巻き戻る」

「戦争の1年が過ぎました。私たちは戦前とは全く違う国に住んでいます。戦前でさえ人権は守られず、徐々に悪化していました。しかし、戦争以降、法の概念としての人権も公法もロシアには存在しないと言えます。私たちはいま裁判を行っています。この事務所に関するものです。私たちはお金を支払い、法的には事務所の所有者です。しかし、法そのものが機能していないので、事務所が奪われてしまいます(※モスクワ裁判所は2月8日に事務所の所有権を無効とする判決を出す)。多くの友人や同僚はいま刑務所にいます。アレクセイ・ゴリノフ氏(※モスクワ区議 侵攻めぐる『軍虚偽情報』で懲役7年の実刑判決)やイリヤ・ヤシン氏(※野党政治家 侵攻めぐる『軍虚偽情報』で懲役8年半の実刑判決)、ウラジーミル・カラムルザ氏(※反体制派 侵攻めぐり「国家反逆罪」で起訴)。 明日、私や『メモリアル』の同僚が刑務所に入れられることはないと言い切ることはできません。
言論の自由はまったくありません。私は抗議のために、例えば、『ウクライナに平和を、ロシアに自由を』というメッセージなどを何度も掲げました。私はすでにいくつかの罰金として多額のお金を支払いました。同じメッセージを掲げた人が投獄される可能性だってあります。行政的な処分を科されるのか、刑事処分を科されるのか、すべては恣意的です。『メモリアル』の友人、同僚だけでなく、若くて活動的な多くの人々がロシアを去りました。今ほど多くの知人や友人がロシア国外にいることはかつてありませんでした。動員される危険にさらされている若い男性も去りました。いま起こっていることは、ウクライナと全世界にとっての悲劇であるだけでなく、私の国にとってもひどい悲劇であるように私には思えます。国が時計の針を巻き戻しているのです。21世紀から20世紀へ。 19世紀かもしれません。人々は何かを言うことを非常に恐れています。人前で話すのがとても怖い。これはソ連時代とまったく同じです. 人々はキッチンに仲間だけで集まり、話が外に漏れないようにして過ごしている。完全にソ連時代です。誰もが非常に恐れています」

動員に抗議するデモ 2022年9月