絵に描かれた“心の傷”

子どもたちの日常は戦争の影に覆われている。毎日おきる停電に、空襲警報、それに高揚するナショナリズム。そうした環境は子どもたちの心にどのような影響を与えているのか。ヒントとなるのが、子どもたちが描いた絵だ。学校の心理カウンセラーのマリナ・ダビデンコさんが絵を見せてくれた。

開戦前に子どもたちが描いた絵には、草花や川などの自然や虹などで色彩に満ちていた。それが、いま子どもたちが描くのは、ミサイルや戦車、破壊された家など戦争にまつわるものばかりになっている。ほぼすべての生徒が、ウクライナ国旗を描き込むも特徴的だという。

9歳のニキタさんは、自宅の上空を飛ぶミサイルの絵を描いた。絵に込めた思いはあまり語りたがらなかったが、こう漏らした。
「空襲警報が少し怖いです。戦争が終わってほしい」

ロシア軍による市民虐殺があきらかになったブチャの街を描いたサーシャさん。
「占領者がブチャの家を破壊したから絵にしました。われわれが勝利して、戦争が一日も早く終わってほしい」

紙を真っ黒に塗りつぶし、真ん中にろうそくの絵を描いた少女もいる。アリサさんはこう話す。
「戦争中であっても、暗くても灯りがあることを描きたかった。平和になって、普通の生活に戻りたいです」

心理カウンセラーのマリナさんによると、戦争が始まってから子どもたちに落ち着きがなくなり、中には悪夢を見る子どももいるという。

「今の環境は、子どもたちにとっては適切ではありません。それでも、心理カウンセラーとしては子どもたちが感情を絵で表現しているのは良いことだと思っています。子どもたちは遊びながら、創作しながら自らを癒やしているのです