■「ハラハラした。もうダメかと思った」交渉担当者の“協力”

国会も閉会した週明けの月曜。静かな国会内で、自民党の交渉担当者は「今日の協議もダメなら、また突っぱねる」と口にする。

一方、公明党の交渉担当者と北側副代表は、朝から会議室に集まり、政府側から提示された新たな全文案をもとに議論を重ねていた。
もともとの案では、日本のEEZ内に着弾した中国の弾道ミサイルについて「我が国及び地域住民に脅威と受け止められた」と記されていたが、新たな案では「我が国及び」が削除され「地域住民に脅威と受け止められた」と書きぶりを変えた。
中国のミサイル発射を「脅威」と受け止めたのはあくまで「地域住民」とすることで、公明党側の理解を得ようという案だった。
「脅威」の記述に慎重だった北側副代表は、「山口代表に確認を取れたら」と事実上のGOサインを出した。

午後3時からの自公の協議を30分ほど遅らせて、公明党の交渉担当者は山口代表のもとへ説明に向かった。山口代表を前に、交渉担当者はこう訴えたという。

「政府としての認識ではないので、外交上も問題ない。幹の部分ではない、枝葉のところに光を当てる必要はない」(公明党 交渉担当者)

公明党の議員はさらに「自民党側も持たない」と山口代表に迫ったという。異例のことである。山口代表の確認も無事取ることができ、その日、自公の協議は合意に至った。

これまでの15回の与党協議を終え、ある議員がこう漏らした。

「ロスタイムになんとか点が入ってよかった。ハラハラした。もうダメかと思った」

自民・小野寺五典安保調査会長(12月12日)

ワーキングチームの座長である、自民党の小野寺安保調査会長は「長時間にわたるメンバーの協力に大変感謝します」と述べ、与党協議を締めくくった。
自民党と公明党の“違い”が注目された与党協議だが、歴史的な交渉を妥結に導いたのは、互いを理解し合った担当者同士の“協力”だった。

(TBSテレビ報道局政治部 与党担当 中野光樹)