耐震化率は地域差が大きい 大都市が数字を引き上げている現実

 しかし、被害想定などを検討してきた政府のワーキンググループ(作業部会)の主査で名古屋大学の福和伸夫名誉教授は、南海トラフ地震で被害が大きいと想定される地域の耐震化率の低さを指摘します。

 福和氏は、「耐震化率が90%に近いのは、三大都市(東京・大阪・名古屋)に引きずられている(周辺の)大都市ばかり」だといいます。

 近畿・徳島の耐震化率は、全国平均の87%を大阪府(88.7%)や兵庫県(90.1%)では上回っていて、東京都(92%)や愛知県(91.2)も全国平均を上回っています。和歌山や徳島など南海トラフ地震の被害が大きいとされる地域では平均を下回っているのです。 

 福和氏は「耐震化を進めれば被害は圧倒的に減る」といいます。地震後すぐに津波から避難するには、自分自身がケガをしないことが必須条件です。住宅が崩れケガをしてしまったら、津波から逃げること自体ができなくなってしまうのです。

 南海トラフ地震が起きた「後」にできるのは、火災を最小限に抑えることや津波からの避難です。一方、耐震化工事や防災用品の備蓄などは、地震が起きる「前」、つまり今できることなのです。

 2025年、そして2026年・・・「いずれ、必ず起きるもの」と捉え、備えを進めることが重要です。