去年11月から12月にかけて、札幌や小樽市内で無免許運転を繰り返したとして10日に逮捕・送検された若本豊嗣容疑者52歳。
若本容疑者は3年前、自分が改造・運転していた車からタイヤが外れ、タイヤの直撃を受けた当時4歳の女の子が重体となる事故を起こしていた。
去年4月の裁判で若本容疑者は、懲役3年・執行猶予5年の判決が言い渡されている。
判決から約半年しか経過していない、執行猶予期間中の無免許運転。
被害に遭った女の子の父親は、今回の逮捕をどう受け止めているのか。HBCの取材に、胸の内を語った。
「(娘は)今も意識はありません」
父親
「事故後から変わらなくて、今も意識がない状態で入院しています」
事故直後、医師からはこう告げられたという。
父親
「脳と頸椎への損傷が大きいので、回復する見込みはまずないと言われました。
それが今も続いています」
入院を続ける娘に、面会のたびに声をかけ続けている。
父親
「よく最近の話をします。お姉ちゃんがこういうことにハマってるよとか、兄弟の様子とか祖父母のこととか。今年雪が多いんだよとか、日常的な会話をできるだけするようにしています」
「家族が足りない」
事故は、家族の生活を一変させた。
父親
「事故直後は、娘がいないだけで家の雰囲気が全然違いました。家族が足りない状況が続いています」
今も喪失感は消えない。それでも父親として、家族を支えなければならない。仕事を続けながら、賠償問題や弁護士とのやり取りなど、事故後の負担と向き合っている。
父親
「ずっと悲しい気持ちで沈んでいるわけにもいかないので、子どもたちにとってなるべく日常を幸せに感じてもらえるように心がけています」
「やっぱり。という気持ちもあった」
若本容疑者が無免許で再び運転し、逮捕されたことを知ったとき…。
父親
「率直に言うと、“やっぱり”という気持ちもありました。前歴にも無免許運転があったので、またするんじゃないかと、思っていた部分はあります。果たして執行猶予の5年間、何も罪を犯さずに過ごせるのかと」
無免許運転は仕事のためだったという若本容疑者の供述については。
父親
「車がなくても、誰かに乗せてもらう選択肢はあったはず。そういう選択をしたのは本人です」
さらに、若本容疑者の周囲に対する疑問も浮かぶという。
父親
「家族は知っていたのか。雇っている側は承知していたのか。いろんな人に対する疑問があります」
そして若本容疑者が逮捕されたことで、安堵する気持ちもあった。
父親
「別の誰かを被害に遭わせる前に、再び重大な事故を起こす前に警察が逮捕してくれたのは良かったと思っています」
裁判での誓いはどこへ?「嘘をついてもいい。そういう人間なのか」
裁判で若本容疑者は、「今後は免許を取るつもりはない、車を運転する資格がない」「本当に悔やんでいる、乗らないという選択肢が無かったのが悔しい」「本当に反省しています。今後一生をかけて償っていきます」などと語っていた。
札幌地裁は「今後自動車の運転をしないと誓うなど、自らの行動を反省する態度が認められる」などとして、懲役3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。
父親
「裁判所が、若本容疑者の善意だとかそういった部分をある程度信じた判決でもあるのかなと。被告の反省を信じた結果だったのではないかと思います」
しかし、執行猶予中に犯した無免許運転という違法行為。
父親
「裁判で嘘をついても、そこで罪に問われなければ、嘘をついてもいい、そういう考えの人間なのかなと。(それが)証明されたのが今回の逮捕なのかなと思う」
法廷で語った言葉が守られていないものは他にもある。
父親
「自分は裁判の中で加害者に質問できる機会があったんですけれども、私は『1人で払いきれる額ではないので、周囲の人間に協力を。もしくはもう1人の加害者、改造車の所有者と相談して賠償する計画をちゃんと立ててほしいと。すると彼は『約束します』『できます』とはっきり言っていました」
しかし、その約束は守られていないという。
父親
「判決が出た後、私が『もう一人の加害者と相談して賠償する計画は進んでいますか』と尋ねたら、弁護士を通じて『そんなことはしない』『する気はない、自分だけで払っていく』とはっきりと拒絶されました」
「彼らは普通の日常に戻り、自分たちはずっと苦しむ…」
父親
「彼らは普通の日常に戻ることができて、自分たちはずっと苦しんでいる。それはすごく理不尽だと感じています」
幼い娘が回復の見込みがなくベッドに横たわる一方で、加害者は日常を取り戻す。置き去りにされた現実に被害者家族は、やり場のない怒りと無力感に苦しんでいる。
父親
「自分たちができることが非常に少ない。黙って耐えるしかないのが無力で、脱力感を感じて残念です」
父の日の似顔絵
父親は一枚の紙をカバンから取り出し記者に見せてくれた。元気だった娘が描いてプレゼントしてくれた似顔絵だ。
父親
「事故のあった年の父の日に書いてもらったんです。やっぱり戻れないかなって、この時に戻れたらなっていつも思います」
「言葉ではなく、行動で」
父親がいま、若本容疑者に伝えたいことは何か。
父親
「話が通用しないんじゃないかと。彼らの言葉には何の意味もない。行動で示してくださいと。謝罪や言葉はもう信用できない。本当に反省しているのか。事故のことは終わったことなのか。いま何を考えて生きているのか、それが知りたい」
そして父親は、もう一つ、加害者に向けて伝えたいことがあるという。娘の命が、いまも医療や福祉の現場に支えられている現実だ。
父親
「娘がこういう状態になって初めて知ったことでもあるんが、病院や施設の方々に支えられているというのは本当に大きいです。本当に大変な働き方をしている中で、自分たちはお世話になっています。若本容疑者には、自分がひどい目に合わせた人と、その周りがどういう目にあっているのか。そういうことを常日頃から意識してほしい」
父親が社会に問いもの
父親
「自分も運転するので例外ではないのですが、運転する以上、誰かに危害を与えるリスクは常にあります。常に安全への注意を第一に意識するドライバーであってほしい。そういう人が多い社会になればいいとは思ってます」
交通事故は特別な誰かにだけ起きるものではない。ハンドルを握るすべての人に向けた言葉だった。
若本容疑者の裁判での誓いは何だったのか、償いとは何か、執行猶予中の再犯が、改めて重く問いかけています。











