最低賃金“引き上げ競争”の背景

依然として物価高の影響が続く中での、最低賃金の引き上げ。

国の目安を上回る引き上げを決めたのは39の道府県で、最大の引き上げ幅となったのは熊本県。ついで大分、秋田、岩手となっている。

【2025年度最低賃金 引き上げ額】
〔1〕熊本県:82円
〔2〕大分県:81円
〔3〕秋田県:80円
〔4〕岩手県:79円

近隣県との“最低賃金の引き上げ競争”のような状況に、経済財政諮問会議民間議員などを歴任した伊藤さんは、「同じような競争は企業でも出てくる」と話す。

『東京大学』名誉教授 伊藤元重さん:
「賃金が全体的に上がっていく時には、上がり方の少ないところと高いところが出てくるので余計にその差が目立つ。なのでこういう競争は地域だけじゃなくて企業間でも出てくる。そうしないと人が流出してしまう。隣接県でもかなり意識すると思う。実際に企業の採用でも広域で人材を探すので、当然最低賃金だけではないが賃金差は注目される」

2024年は、徳島県が「84円の引き上げ」に踏み切り話題となった。当時、番組の取材に対し知事は、ある“危機感”を口にしていた。

徳島県・後藤田正純知事(2024年9月放送)
▼「1人当たりの県民所得は全国で8番目なのに最低賃金が下から2番目は屈辱」
▼「徳島(の賃金)が安いから他の県に行くとなれば結局人手不足倒産になる」

――徳島は特に大阪や神戸と橋で繋がってることもあり、人材流出の危機感をあげていた。徳島の例を見て2025年は各県でも同じような引き上げの動きになったが、最低賃金が賃金全体に与える影響は?

伊藤さん:
「最低賃金は国や自治体が唯一関与できる賃上げ政策なので、インパクトは大きい。また、最低賃金引き上げの動きは日本だけではなく、世界的にも非常に大きい。コンセンサスとして『最低賃金があまり高くない限りは、少しくらい上げても雇用には影響がない』と。そういう研究がノーベル経済学賞を受賞しているぐらいで、世界的に最低賃金引き上げの流れがある」