愛情を感じる古い写真 1枚1枚場所を調べた
市の広報紙で「前略、市史編さん室より」を目にしたのは、医療機関に隣接するホテルだった。「市史編さん室にアルバムを持っていこうか」と思ったが、そんな個人的な用事で行っていいものか、迷惑にならないか、という迷いもあった。
たまたま知り合った元指宿市役所の人に相談したところ、「編さん室は指宿の昔の写真を探しているし、良いと思いますよ」と背中を押してもらった。アルバムを持って市史編さん室を訪ねたのが、2025年1月8日だった。
その日にアルバムを預かった指宿市市史編さん室の上川路さん。これまで市民から「昔の商店街の写真」などの持ち込みはあったが、八幡さんのように「写真の場所がどこか知りたい」というパターンは初めてだった。預かってはみたものの、最初は「分かるかな」と不安な気持ちもあった。
預かったアルバムの写真を見ていくと、2人で収まった写真もあれば、互いを撮りあったものもある。
真面目な表情だったりおどけていたり。モノクロの中に若い夫婦の時間が流れていた。上川路さんは、「新婚旅行らしい幸せな様子と、ちょっと緊張している感じもあって、とても良いな」と感じたという。

2人ともスーツ姿で、きちんとした格好で旅行する当時の新婚旅行のスタイルだった。宿泊先では浴衣でくつろぐ姿もあった。

アルバムをめくるうち、愛情を感じて引き込まれた。50枚を超える写真から指宿市が写っている場所を1枚1枚調べることにした。
昭和36年ごろ、観光客の増加を受け、指宿市の海岸沿いではホテル・旅館の建設ラッシュを迎えていた。2人が指宿市を訪れたのはまさにその頃。ホテルの正面で2人並んでいる1枚は、指宿観光ホテル(現 指宿いわさきホテル)と分かった。
水辺で撮られた写真もあった。海ではない。海ではないとしたら、観光地の池田湖しかない。池田湖は周囲15キロのカルデラ湖だ。地図や今の写真と照らし合わせながら探すと、2人の後ろに写る山の形がぴたりと一致するポイントを見つけた。池田湖の北西で撮ったことが分かった。

上川路さんは、観光パンフレットの地図に印をつけ、特定した写真の場所をひとつずつ記入していった。














