「両親の新婚旅行の場所を探しています」市職員が受けた電話

鹿児島県・指宿市の職員が、ある日「両親の新婚旅行の場所を探しています」という電話を受けた。預かったのは、64年前の古い新婚旅行のアルバム。調べていくと、そこには秘められた家族の物語があった。

鹿児島県・薩摩半島南部の指宿市(いぶすきし)は、砂むし温泉で知られる観光地だ。人口はおよそ3万6千人、南国の明るい街で、夏になると市役所などの公式ウェアがアロハシャツになる。

指宿市

指宿市総務課市史編さん室で働く公務員・上川路隆介さん(43)のもとに1本の電話がかかってきたのは、2025年1月のことだった。

「両親が新婚旅行でめぐった場所を探しています。見てもらいたいものがあるんです。」

市史編さん室では、「前略、市史編さん室より」という連載を広報紙に載せ、市史のために調べたことや分かったことを読み物にしている。「指宿の古い資料や写真などの情報を集めている」という呼びかけも載せていて、それを頼りにかかってきた電話だった。

64年前のアルバム、市史編さん室へ

1月8日、指宿図書館の2階にある市史編さん室を訪れたのは、福岡県に住む元公務員・八幡さん(仮名・63)。その手には緑に金色でPhotosと箔押しされたアルバムがあった。ずいぶん古いものらしく、台紙の側面は薄茶色になっている。中に貼ってある写真は、ほとんどが白黒だった。

八幡さん(仮名)両親の「新婚旅行記念アルバム」

「指宿は、父と母が新婚旅行で訪れた場所なんです。この写真の撮影場所がどこか教えてもらえませんか。」