息子が大学の入学式で着る大切なスーツ。はるか250キロ先の自宅に忘れてしまった40代の母親。「もう絶対に間に合わない」と思ったとき、思わぬきっかけで「救いの神」が現れた。その「救いの神」にもスーツに秘めた思いがあった。
福岡、佐賀、鹿児島、スーツをめぐる2つの家族の物語。
入学式まで10時間、スーツがない
「そういえばスーツはどこ?」明日は大学の入学式。一人暮らしを始めたばかりの息子のアパートで、いざ寝ようと思った時に聞かれた。
その瞬間、母は自分がとんでもない失敗をしていたことに気が付いた。ここは福岡県久留米市。入学式用のスーツは、はるか250キロ南の鹿児島市の自宅に忘れていた。
入学式まで10時間ほどしか残っていなかった。