「よしっ、いくか!」
午前11時。
大谷さんの掛け声とともに、最後の営業がスタートしました。

待ちわびた客たちが次々と入店し、あっという間に満席に。
厨房は一気に慌ただしくなりますが、大谷さんをはじめ、パートさんたちの動きには一切の無駄がありません。
長年培ってきたチームワークが、最後の輝きを放ちます。

店の前に続く行列には、様々な思いを抱えた客の姿がありました。

女性客
「私たちは2人とも輪島(能登の地震)で被災しとる。昔、こっちへ船で来て、ここでまかない。魚あげてご飯食べて…もう40年昔の話。なんでなくなるんかなと思って。」

白山市や小松市から通う常連の男性2人組は、
「もう20年も30年もここに来とる。これが食べられなくなると本当にさみしい話で…」と、別れを惜しみます。

そんな中、厨房にふらりと現れたのは、現在県外で暮らす大谷さんの娘・きよらさん。
かつてこの店でアルバイトをしていた友人と共に、駆けつけました。

娘・きよらさん
「さみしいですね。ずっとこれで育ってきてるので…」

思い出のキスフライを頬張り、少しセンチに…
朝、両親には『頑張ってね』と一言。

滋賀から駆けつけた娘のきよらさん 思い出の味を噛みしめる

帰り際、きよらさんたちから両親へサプライズプレゼント。
「おかん喜ぶと思って」
家族の温かい絆が、店のラストランに彩りを添えました。