最終日に訪れた客は200人以上。
午後2時、最後の客が会計を済ますと、50年の歴史を刻んだ食堂は、その営業を終えました。

最後の客を見送り、大谷さんは、こみ上げる感情を抑えるように静かに語り始めます。

店主・大谷健二さん
「たくさんの人が来てくれたので…愛されとったんやなぁって、嬉しかったです。母親がいっぱい漁師の人やら漁業関係者に愛されとったおかげで、ここまでさせてもらったんかなと。それは本当に感謝してます。」

そして、今後のことを尋ねられると、少し表情を緩ませてこう続けました。

「40年頑張ってきたので少し休んでから、また新しいことしてみたいなと思ってます。」

営業後、パートさんたちで囲む最後のまかない。
そこには、豪華な海鮮が並びます。
「このサワラがおいしいんですよ」「サワラおいしいよね」

いつものように笑い合いながら、最後の食事を楽しむ姿は、
まさに‟家族”そのもの。

片付けの途中、東京に住む次男から電話が入ります。
「ありがとうな、わざわざ…」
息子の労いの言葉に、思わずほっこり。

「終わりました」

誰もいなくなった店内で、ポツリとつぶやく大谷さん。
その背中には、感謝と一抹の寂しさ、そして充足感が満ちていました。
港の灯がまた一つ消えてしまいましたが、厚生食堂の味と、そこに集った人々の温かい記憶は、これからも多くの人の心の中で生き続けます。


「嗚呼、名店forever」

MRO北陸放送では、閉店を決めた名店の最後の1日に密着し、失われゆく‟味”、
‟景色”、‟人の営み”を記録し後世に伝えます。
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