日本選手権で標準記録を破るためのペースは?
2人とも今季目標としているのは世界陸上の標準記録(男子1分44秒50、女子1分59秒00)で、自身の日本記録より少し上のタイムである。それを更新するには、どんな走りが必要と感じたのだろう。
久保は静岡国際のレース後に「1周目をもう少し速いリズムで入って、今日の2周目くらいで持っていって、ラストも力まず上げられたら1分59秒切りも見えてくると思います」とコメント。日本選手権では58~59秒で400mを、1分29秒で600mを通過するだろう。ラストの直線で余分な力が入らない走りができていれば、標準記録を突破する可能性がある。
女子800mは静岡国際2位の塩見綾乃(岩谷産業)、同3位の川田朱夏(ニコニコのり)、東日本実業団優勝の渡辺愛(ユニクロ)らもいるが、久保の優位は動かない。
一方の落合は、立て直しが不十分ではアジア選手権で敗れた石井や、6月15日に1分46秒31と6年ぶりに自己記録を更新したクレイ・アーロン竜波(ペンシルバニア州立大)、日本インカレに1分46秒79の大会新で優勝した山鹿快琉(育英大1年)らに後れをとらないとも限らない。
大八木総監督は「まずは勝ちたい」と優勝することを前提とした上で、「自己記録の1分44秒80を更新したい。そこまで行けば、標準記録の1分44秒50も出したい」と記録的な目標を話す。
昨年の日本記録と5月の静岡国際のペースをもとに考えると、400mを51秒台、できれば51秒台前半で通過し、600mを1分18秒台、できれば1分18秒台前半で通過する。インターハイのように誰かが前にいて、その選手を抜きながら自然なペースアップができれば標準記録を突破する可能性が高い。
2人は昨年の日本選手権優勝と日本記録樹立に続いて、今年4~5月に世界陸上開催国枠エントリー設定記録を突破した。他に標準記録突破や、Road to Tokyo 2025(標準記録突破者と世界ランキング上位者を1国3人でカウントした世界陸連作成のリスト)で出場資格を得る選手が現れなければ、2人は地元枠で世界陸上に出場できる。
だが地元枠での出場は、言ってみれば最後の手段。最後から2番目の方法が日本選手権で3位以内に入り、8月末にRoad to Tokyo 2025が確定したときに56位以内(男女800mの出場人数枠)に入ること。7月2日時点のRoad to Tokyo 2025で久保が42位、落合が50位につけているので、日本選手権やその後のレースで自己記録に近い走りをすれば可能性は高まる。
そして最善の方法は、今回の日本選手権で標準記録を突破して3位以内に入り、その場で代表に内定することだ。今回も若手2人が、同じ日本選手権で同じ目標を達成するだろうか。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真は左から落合選手、久保選手

















