9月開催の東京2025世界陸上の最重要選考競技会である日本選手権が、7月4~6日に東京・国立競技場で行われる。800mは男女とも、昨年高校生が日本一の座に就いた。落合晃(18、滋賀学園高→駒大1年)は1分44秒80、久保凜(17、東大阪大敬愛高3年)は1分59秒93と、2人ともその後の試合で日本記録をマーク。名実とも日本一となり、今年目指すのは東京2025世界陸上代表入りだ。日本選手権とその後の過程で、どんな走りをすれば代表への道が開けるだろうか。
静岡国際でともにシーズンベスト
5月3日の静岡国際で、2人とも今季自己最高(シーズンベスト)を出した。落合は1分45秒16、久保は2分00秒28で、ともに自己2番目の記録。2人とも前日本記録を上回っていた。これは日本記録がフロック(偶然に出た良い記録)でないことを証明している。
2人とも400m通過は日本記録のときとほぼ同じ(落合51秒4、久保58秒7)。久保は600mも同じで、ラスト200mが0.2~0.3秒遅かった。「今日は日本記録のレースとあまり変わらない体の感覚でした。しかしラストが力んで落ちたかもしれません。日本記録のときはそこもリラックスして走ったのかな、と思います」。
落合は600m通過が約0.3秒、日本記録の時より遅く、最後の200mは同じだった。「今日はペースメーカーが400mで外れたときに少しペース変動があって、バタついてしまって対応できませんでした。昨年のインターハイ(日本記録)は自分が前の選手を抜いて、そこから切り換えていく感じでした」。風速と風向きにも左右されるのでタイムだけで単純比較はできないが、静岡国際はレース直後に選手がコメントした内容と通過タイムが一致していた。
久保は木南記念で、落合はアジア選手権で不調も経験
しかし静岡国際の後、2人は不調のレースを経験した。
久保は静岡国際から8日後の木南記念に出場。地元大阪で開催された大会で、標準記録突破への意気込みが強かった。しかし2分02秒29と、久保が欲しかった記録には届かなかった。着順も、最後に豪州選手に抜かれて2位だった。
「2周目に入ったくらいから脚の感覚が静岡と全然違いました。1周目からリラックスが少なかったと思いますし、2周目に入ってキツくなったときに力んでしまいましたね。静岡で調子が上がって絶対に標準イケると思っていましたし、地元開催で応援もたくさん来てくれていました。今日は母の日でもあったので(優勝者に贈呈される)花束を持って帰りたいな、と思っていました」
走ってみれば静岡国際の疲れがあったのも事実で、そこにメンタル的な力みも加わって、思った走りができなかった。
落合は5月末のアジア選手権(韓国クミ)が静岡国際の次戦で、予選は1分46秒24で1組1着と順調に通過したが、決勝は1分48秒01もかかって5位。石井優吉(23、ペンシルバニア州立大)が4位と先着し、落合は23年10月の国民スポーツ大会以降で初めて日本選手に敗れた。
駒大の大八木弘明総監督は、敗因を次のように分析した。
「疲労が抜け切れていませんでしたね。4月はまだ授業も少なかったのですが、5月は大学の授業に行ったり練習に来たり、環境が変わったことが大きかった。結果を出さないといけないプレッシャーもあったと思いますよ」
高校時代の恩師、滋賀学園高の大河亨監督は「負けてよかったかもしれません」と、教え子の敗戦を前向きにとらえていた。
「高校2年の鹿児島国体で立迫大徳選手(鹿児島城西高、現早大2年)に敗れたとき、本当に悔しがっていましたが、気持ちは楽になって、冬場に頑張ることができたんです。それが昨年の快進撃につながりました。今回も上手く立て直してくれると思います」
大八木総監督は日本選手権直前の取材に「アジア選手権後は高校時代の流れも見直したり、練習の質のところで余裕も持たせたりして、少しずつ良くなってきました」と答えている。
一方久保は、アジア選手権で2位、2分00秒42と一足早く復調を示した。

















