鈴木&小海の走り次第で優勝争いも

マラソン五輪代表の鈴木とトラック代表の小海。2人が1区と3区に起用されると予測できるが、どちらの区間になるかはわからない。それは鈴木がマラソン選手だからスタミナ型と、一概に言えないからでもある。大東大2年時には10000mで学生歴代2位(現歴代4位)の31分37秒88をマークし、駅伝でも前述のように前半からハイペースで飛ばして区間賞を取っていた。
現在はチームメイトの小海の方がスピードはあるが、鈴木も練習で食い下がっている。

「近々では4~5kmプラス1kmの練習があって、遥ちゃんと私が5km、他のメンバーは4kmくらいを走ったんです。私も5kmは難なくこなすことができて、多少は遥ちゃんの練習に付けるようになった、と感じました」

しかし2人のキャラは対照的だという。年齢的には鈴木が3学年上になるが、「私は練習でレースよりもそわそわするのですが、遥ちゃんは淡々としています」と、年下選手の落ち着きに尊敬の思いを持っている。

「プラス1kmは遥ちゃんが3分切り、私は3分00秒まで上げていい、という設定でした。遥ちゃんが一番前、私がその後ろからスタートするために並んでいたのですが、3分切りと3分00秒ならそれほど差は生じないかもしれません。私が付いて走るか少し間をとって走るか迷っていたら、遥ちゃんが察してくれて『後ろについてもらっても大丈夫ですし、どちらでも大丈夫です』と言ってくれました。本当にしっかり者タイプなんです。言うことははっきり言いますし。考えすぎたり、不安が出てしまったりする私とは違いますね」

そんな2人が同じオリンピックを経験して、意識を高く持って世界に挑む意思を強くした。そのことばかり考えているわけではないが、練習後のダウンジョグを一緒に行うなど、気持ちが通じる部分はある。

「このチームだから2人が育っているのかもしれません」と早瀬監督。「山下(佐知子)前監督(現エグゼクティブアドバイザー兼特任コーチ)が第一生命グループの伝統を作って、今もスタッフが充実しています。ノビノビした中で頑張る雰囲気ができていますね。2人が海外合宿などに行っても他の選手は妬んだりしないで応援します。2人が頑張るなら自分たちも、という気持ちになっています」。

パリ五輪代表2人を中心とした雰囲気の良いチームが、駅伝になったときにどんな力を発揮するのだろうか。この1年間つねに、日本トップクラスの戦績を残してきた小海がその力を発揮すれば、優勝争いに加わることができる。鈴木は区間上位と予想されるが、想定以上の力を発揮して区間賞を取る可能性もゼロではない。そのとき第一生命グループの、13年ぶりの優勝も見えてくる。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)