井手と風間が戦力に 代表トリオの影響もあってチームが成長
資生堂は一昨年の優勝メンバーから2人が移籍と引退でチームを去り、昨年は3区の失敗(区間20位)もあって4位と敗れた。しかし今年は井手と新人の風間歩佳(23)が、優勝争いをするチームの戦力として期待できる。井手は1500mで日本選手権2位、中距離の日本トップ選手である。5000mでも10月に15分45秒44と好記録で走った。冬期練習から苦手意識のあった長い距離にも「やってやるぞ」と積極的に取り組んだ。距離が短い2区では区間2位、5位、5位と区間上位で走り続けてきたが、今年は1区出場もイメージしている。
「1区なら最初の流れが決まる大事な区間。距離も7kmありますし、起伏もあります。気持ちだけは絶対に負けないようにします。2区は去年初めて先頭を走りました。(五島)莉乃さんが差をつけて来ることは予想していましたが、追われる立場になることに怖さもありましたね。アンカー(6区)は高校生の時に1回だけ走りました。イメージはそれほど持てていませんが、どの区間でも行けるようにしています」
風間も10月の記録会5000mで15分49秒76と、自身初の15分台をマークした。中学時代にジュニアオリンピック3000m優勝、高校2年時に全国高校駅伝1区3位の戦績がある。
青野監督は「入社したときの状態はあまりよくありませんでしたが、体作りをしっかりやってきて、9月、10月と5000mの自己新を連発しました。我慢して走れることが特徴で、キツくなっても1人で押して行ける選手です」
その風間が、代表選手が3人在籍するチームの利点を次のように話していた。
「競技面はもちろん、生活面や人間性も素晴らしい人たちです。一番は体のメンテナンスの仕方ですね、徹底しています。存在だけでチームを引っ張ってくれていますが、チームメイトにも丁寧に言葉をかけてくれる。少し言葉をかけてもらっただけで、私は気持ちが動きます」
一山が10月の5000mで16分27秒09で、本番までに状態を上げる予定だが、本来の力が出せるかどうかは未知数。だが井手に1区を任せられれば五島と高島を3区と5区に残しておくことができる。風間が5区で特徴の持久力を生かす走りができるなら、五島、井手、高島で3区までを大きくリードできる。
一山が完全復活したり、代表トリオ以外のメンバーが快走したりできれば、資生堂のV奪回の可能性が大きくなる。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)